尖閣諸島周辺で6月上旬から1カ月以上にわたって断続的に実施された中国の無許可海洋調査に対し、海上保安庁の巡視船は長期間の警戒監視を迫られた。

 海保は尖閣以外での中国の領海侵入事案や日本海での北朝鮮の違法操業などにも対応しており、多方面で消耗戦を余儀なくされる恐れが強まっている。

 尖閣周辺には昨年8月、多数の中国の漁船と公船が押し寄せており、同様の事態が今年も発生すれば、尖閣警備体制への影響が懸念される。

 海保は尖閣周辺で「中国公船を上回る勢力で対応」(海保担当者)し、尖閣領海警備専従体制により大型巡視船14隻相当の規模で警戒している。

 だが、昨年8月に約200〜300隻の中国漁船が現れた際には、これを上回る15隻の中国公船が接続水域内で確認され、日中対立が先鋭化した。

 日中両政府は先月末に海洋問題について話し合う「高級事務レベル海洋協議」を開催。日本側は中国当局が尖閣周辺で漁を解禁する8月を前に自制を促したが、中国側は尖閣を自国領と主張しており、平行線に終わったとみられる。

 海保によると、平成24年に40隻だった1千トン以上の中国公船は31年に139隻まで増強される見通し。

 一方、日本側は昨年12月に開いた海上保安体制強化に関する関係閣僚会議で、大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備推進などを決めたが、31年の海保巡視船の保有見込みは66隻で、中国の半分以下にとどまる。

 今月に入り、中国公船2隻が九州北部沖と青森県沖で日本の領海内を航行し、巡視船が監視を続けた。また、9日からは違法操業する北朝鮮漁船を排除するため、男鹿半島から西に約400キロ離れた日本海の大和(やまと)堆(たい)に巡視船数隻の派遣を開始した。

 尖閣周辺での海洋調査も常態化するとみられ、海保が最も危惧するのは、「これらが同時多発的にエスカレートする事態」だ。それが現実となれば、巡視船をどこに、どれだけ投入するか難しい判断を迫られ、厳しい消耗戦となる。

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魚釣島周辺で領海侵犯した中国の「海警」(中央)と、警戒に当たる海保の巡視船、ボート(仲間均市議提供)