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2017/07/26(水) 21:41:45.70ID:CAP_USERロシアが影響力拡大を図る一方、経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国の進出も顕著となり、EUは危機感を高めている。
EUは今月12日、独仏伊など加盟7カ国、セルビアなど未加盟のバルカンの6カ国と伊北東部トリエステで首脳会議を開き、バルカン各国間の交通網整備事業に合意した。EUも資金支援し、経済発展で遅れるバルカン地域のインフラ整備を後押しする目的だ。
モゲリーニEU外交安全保障上級代表は「首脳会議は成功だ」と胸を張る。ただ、メディアには「バルカンへのEUのいいかげんさが明白になった」(欧州メディア・ユーラクティブ)との皮肉も上がった。
20世紀初め、列強の勢力争いも絡んで「欧州の火薬庫」とされたバルカンは第一次世界大戦の発火点となり、冷戦後は旧ユーゴ解体の過程で泥沼の紛争に陥った。旧ユーゴ7カ国のうちスロベニアとクロアチアはその後、EUに加盟。残る5カ国とアルバニアもEUへの道を歩む。
一方、EUは近年、相次ぐ危機で欧州統合の欠陥やゆがみが露呈した上、英国が離脱を決定。加盟国拡大の機運は盛り上がらず、バルカン諸国には「何をいつまでに期待できるのかはっきりさせてほしい」(セルビアのブチッチ大統領)とのいらだちも募っている。
首脳会議で交通網整備の合意を急いだのは、こうした状況を受け、バルカン諸国に対し、「ゆっくりとだが、確実にEUに向かっていると保証する」(メルケル独首相)ためだ。「他の大国が影響力を確保しようとしている」(ジェンティローニ伊首相)との事情がさらにEUを突き上げた。
「他の大国」として最も動きが活発なのはロシア。現地報道によると、もともと関係の近いセルビアで石油企業を買収し、武器取引なども通じて関係の強化を図っている。3民族の微妙な均衡で成り立つボスニア・ヘルツェゴビナでも、構成地域のセルビア人共和国への支援を強化する。
EUに大きな警鐘となったのはモンテネグロでの動きとされる。昨秋の議会選では親欧米派が勝利し、同国の北大西洋条約機構(NATO)加盟も実現した。だが、議会選当時にクーデター計画が摘発され、ロシアが関与した疑惑が浮上。EUが内向きになるなか、「ロシアが空白につけ込もうとした」(独メディア)と警戒が高まった
EUとロシアのせめぎ合いに中国も割って入ってきた。中国にとってバルカン地域は一帯一路の「欧州側の玄関口」であり、ギリシャの主要港を抑えた今、セルビアの首都ベオグラードとハンガリーの首都ブダペストを結ぶ高速鉄道整備を目指している。
中国は鉄道以外にもセルビアやボスニアのセルビア人共和国、モンテネグロなどで製鋼所を買収したり、発電所や道路の整備などに協力したりして接近。セルビア人共和国では地元当局が最近、学校での中国語の授業の導入を表明したとも伝えられている。
EUはバルカン諸国に対し、加盟の展望を示すことで、民主主義や法の支配の定着に向けた改革を促してきた。だが、中露の影響力拡大で、その努力が挫折しかねないとの懸念もある。オーストリアの南東欧専門家、フロリアン・ビーバー氏はそんな事態を避けるため、「EUにはもっと創造的な対応が必要」と語る。
中露だけでなく、オスマン帝国時代にバルカンを支配したトルコも、イスラム教徒が暮らすボスニアやコソボでモスク(イスラム教礼拝所)の改修を支援するなど存在感を高めているという。トルコはEU加盟候補国だが、最近はEUとの関係悪化が著しい。
国際秩序が揺れる中、かつての「欧州の火薬庫」をめぐる政治的な綱引きがどう展開されるのか。目が離せない状況は続きそうだ。
■ユーゴスラビア■ 東ヨーロッパの多民族・多宗教国家。第二次大戦後にユーゴ連邦人民共和国が成立。独自の社会主義路線を進め、1963年に社会主義連邦共和国となった。91年にスロベニア、クロアチアが独立宣言。その後、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、コソボとセルビアの計7カ国に分裂。
http://www.sankei.com/premium/news/170726/prm1707260004-n1.html