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 親の世代では横田めぐみさんの父、滋さんが84歳で母の早紀江さんが81歳。有本恵子さん(57)=同(23)=の父、明弘さんが89歳、母の嘉代子さんも91歳となっている。

 平成19年、滋さんから家族会代表を引き継いだ田口八重子さん(61)=同(22)=の兄、飯塚繁雄さん(79)も体調不良が続き7月、静養に入った。「数年のつもり」だった代表の立場は10年に及ぶが、疲労困憊(こんぱい)の中で各地で壇上に立ち、世論の後押しを訴えてきた。

 家族会結成から20年にあたり、飯塚さんはこう語っていた。「20年間も問題が続いているのが異常であり、『節目』などと表現してほしくない。被害者と家族は誰かと交代できる存在ではない。毎日、毎日が節目なんです。被害者も家族も我慢の限界を超え、本当に最後の年という決意だ」

 問題が長期化する中、米国ではトランプ大統領が就任。核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮に対し、4月には武力行使も含めた「圧力路線」を表明し、朝鮮半島有事がにわかに現実味を帯びた。

 危機感が高まる中、有事の際の拉致被害者保護をめぐる厳しい現実も明らかになった。現行法制では自衛隊が有事に被害者を救出するのは不可能で、日本政府は「米国に拉致被害者の情報を提供して協力を依頼する」との立場だ。

 こうした成り行きに被害者家族は怒りを募らせている。さらに怒りを増幅させているのが政治の動きだ。

 「国会の中でももっと拉致問題を大きく取り上げ、解決に知恵を絞っていただきたい。でも、この大事な時に問題を話し合っている様子が伝わってきませんでした。とても悲しく、情けない思いです」

 横田滋さんと早紀江さんは7月、産経新聞に連載しているコラム「めぐみへの手紙」でこう嘆いた。家族は不安と焦りを募らせながらも今年中の「解決」を信じ、待ち続けている。



 「もう命が続かない」。被害者の奪還を訴え続けた家族が今、悲痛な声をあげている。正念場を迎えた救出運動の取材から見える家族の思い、拉致問題の動きを伝える(不定期で掲載します)。

(おわり)