旧民主党政権で首相を務めた鳩山由紀夫氏(70)が産経新聞のインタビューに応じた。夏の特別インタビューとして3回に分けてお伝えする。1回目は外交について。

鳩山氏は持論である「東アジア共同体構想」実現のためアジアインフラ投資銀行(AIIB)顧問を務めるなど、政界を引退してなお独自の「友愛外交」を展開している。核・ミサイル開発に邁進する北朝鮮問題、中国脅威論について持論を直言した。



−−北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を打ち上げた。鳩山氏の融和的な考え方で、そもそも北朝鮮問題に対処できるのか

「北朝鮮のミサイル開発がまったく脅威ではないとの見方はできないと思います。ただ、彼らがICBMを打った目的は、米国に対する交渉能力を持つためではないでしょうか。朝鮮戦争は終わっていません。

核もミサイルも持つ強大な米国に伍して交渉するには、それなりのものを持たないといけない−。ということで、核実験をしたり、ICBMを打ち上げたわけです。でも、日本に対してじゃないんですね。北朝鮮は米国に対して『こっち向けよ』という話なわけです」

「北朝鮮は米国に対してやっているのに、『なんで日本が米国に協力して、ともに戦うのか。ならば、日本の米軍基地もいくぞ』となりかねない。日本政府はどうやって対話路線に導いていくかということに力を注いでいくことが、平和的解決に最も必要なことではないでしょうか」

「簡単な話ではないからこそ、私は『東アジア共同体』実現を目指したい。小泉純一郎政権時には(平成14年9月17日の)日朝平壌宣言までいったわけですから。そのラインに戻す意味において、北朝鮮と日本が対話していける可能性をより高めていく方向に努力をするべきでしょう。

その一つのツールとして共同体というものを目指していくやり方がいいのではないかと思っています」

−−2国間交渉では北朝鮮は核・ミサイル開発の中断に応じなかったが

「かもしれないですけどね。人間関係というか、信頼をいかにして作っていくかなんです。日本の北朝鮮に対する信頼がないと同時に、北朝鮮も日本に対する信頼をかなり失っている。どうするか。互いに失っている信頼を少しでも取り戻していくためには、共通の舞台があってもいいんですよ。

可能性があるのはスポーツ、あるいは環境・エネルギー問題ももっと一緒に議論するやり方だってあると思います。そういうことを通じて、彼らの日本に対する信頼を少しでも回復させて、結果として日本政府の発言に対しても聞く耳を持ってもらい、米朝間の議論を促すとか…」

「韓国の文在寅政権は北朝鮮に対して、かなりアプローチしていますよね。そこも考慮に入れながら、みんなで協力をしながらうまく彼らを交渉場面に導いていくと。それを『核を捨てなければダメだ!』とか最初に言われると、たぶん出て来られない。

議論をしながら核を持つことがいかに無意味、マイナスであるか、説得をすることが大事じゃないかと思います」

−−米国のオバマ前政権は対話路線を重視してしまったため、結果として北朝鮮の核開発を進めてしまったとの見方もある

「ですが、北朝鮮に対する経済制裁が完全になかった状況ではないですよね。これは経済制裁をやっていても役に立たなかったと思う。生ぬるいという見方もあるかもしれないが、北朝鮮と国交を持たない中で、さまざまな制裁を科していることが結果として何をもたらしているのでしょうか。

完全にフリーにしたらとんでもないことになるという、その可能性もすべて否定するつもりはないですが、ただ、今までのやり方で十分な成果を上げられなかったじゃないですか」

「現実問題、いったん核を持った国に『核を捨てろ』と言っても、簡単に捨てることにはならないんですよ。だから日本も(核を)保持するという話も出ているかもしれませんが、絶対くみしたらダメ。

核を持っていることがあなた方の未来にとって無意味であると理解させることのほうが、先に捨てなさいという強硬な路線よりも有効に作用するのではないかと思います」

http://www.sankei.com/premium/news/170801/prm1708010005-n1.html

>>2以降に続く)