シャープの戴正呉社長は10日、経営難に陥っている液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)の再建について、「シャープが主導すれば自信はある。黒字化でき、技術流出もない」と述べ、支援に強い意欲を示した。

 液晶の主要技術を国内に保持するために日本企業で連合を組み、業界首位の韓国メーカーや台頭する中国勢に対抗したい考えだ。

 台湾の電子機器受託製造大手、鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収して12日で1年を迎えるのを前に、堺市の本社で記者会見した。

 戴社長は、テレビや電子機器など用途の多いディスプレー事業は、「日の丸連合で韓国や中国に対抗すべきだ」が持論。この日も「(海外勢に)ディスプレーで負けるのは恥ずかしい」と強調した。

 中国企業のJDI出資案が取りざたされていることについては、「(官民ファンドの産業革新機構を通じて)国の資金が入ったJDIが中国企業になってしまう」と否定的な見方を示した。

 シャープにとってもJDIを支援したい事情がある。省エネ、高精細で曲げられるなどの特徴がある有機ELは将来性が期待されているが、現在スマートフォンなどに使う中小型を安定的に量産できるのは韓国サムスン電子だけ。

 シャープは来年からスマホ向けの生産を始める構えだが、量産化の時期は見えていない。

 一方、JDIは再建の柱に有機ELを据え、2019年の量産化を目指す構えだ。シャープとしては、JDIと「日の丸連合」が組めれば、有機ELが強化でき、世界的な競争力を確保できるメリットが期待できる。

 ただ、シャープとJDIは事業の重複が多く、買収は独占禁止法上の問題が生じるとみられる。このため戴社長は出資以外の支援・協力を模索する考えだ。

 シャープ買収を巡っては、産業革新機構がシャープの液晶事業をJDIと統合する構想を示していた。

 結局、シャープは鴻海傘下に入り構想は消えたが、今度はそのシャープが「日の丸連合」を掲げてJDIへの再建支援に名乗りを挙げる皮肉な構図となった。【土屋渓】

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