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2017/08/11(金) 14:55:11.76ID:CAP_USER日本では暑い夏の日に、ペットボトルで水分を補給する姿をよく見かける。温度が高くなればなるほどスポーツ飲料やビタミン飲料を口にする人が多い。汗で失われたミネラルを補給する必要があるからなのだろう。しかし、中国の地方都市では、人々はキュウリをバッグに入れて持ち歩いている。
どこでもキュウリ!
『僕の! 中国ローカル生活』(学研プラス・刊)は、中国の地方小都市に住む著者・りょうさんのコミックエッセイだ。そこはスマホも通じるしレストランもある。日本の地方都市と近い感じがするけれど、そこでの人々の生活はかなり自由で豪快だった。
そこではしばしばキューリが出てくるので、どうしても目が行ってしまう。それも意外な場所で。
例えば自転車に乗りつつスマホをいじる「ながらスマホ」の人は中国にもいるけれど、キュウリを食べながら自転車に乗っている「ながらキュウリ」の人もいる。さらにエレベーターで乗り合わせた男性が突然キュウリをかじり出す。
不思議な場所で突如としてキューリが登場するのだ。売店にはライム&キュウリ味のアイスもあるのだからすごい。
ソウルフード
中国人はどうやらキュウリを水筒代わりに持ち歩いているようだ。キュウリはその成分のほとんどが水分なので、水を補給するのと同じ感覚でキュウリをかじる習慣があるのかもしれない。だからなのかバッグに入れて常に持ち歩くことも珍しくないという。
なぜペットボトルを飲まないんだろうと感じるだろうけれど、これが長年染み付いた感覚なのだろう。もしかしたら日本人がおにぎりをしばしば持ち歩くのと似た感じなのかもしれない。おにぎりといえば日本のソウルフードだ。
中国でのキュウリも、屋台で山積みに売られていたり、街にはキュウリを売り歩く人もいるし、ソウルフードなのだと思う。
昔話のアイテム
中国の昔話に「徐光の瓜」という話がある(岡本綺堂がまとめた『中国怪奇小説集』にも収録されている)。瓜売りが通りがかった男に瓜を分けてくれと言われるがタダではやらんと断る。
すると男は、では種だけくれと言い、もらった種を地面に植えると芽が出て花が咲きやがて瓜がいくつも実った。男は周囲の人にもそれらを分け与え、悠々と去っていった。瓜売りが振り返ると自分が売っていた瓜はすべて中身が空っぽになっていた、というものだ。
私は子どもの頃にこの童話を読んだ時、人々が実に美味しそうに瓜を食べる様子が忘れられなかった。ジューシーで渇いた体に沁みるこの食べ物は、中国の昔話での重要なアイテムにもなっているのだ。
瓜と母性
瓜が出てくる物語は、中国にはいろいろある。
『金の瓜銀の豆』なんていう魅力的なタイトルもある。桃太郎のように金の瓜からは男の子が生まれてくるのだ。日本にも『瓜子姫』という昔話があるが、これは瓜から女の子が生まれる。水分たっぷりの瓜は、羊水をたっぷり溜め込んだ子宮を連想するのかもしれない。
中国ではないけれど大戦直後、母親が3人の子を連れて朝鮮半島を歩き通して日本に帰った実話『流れる星は生きている』では、栄養失調で乳が出なくなった母親が乳児に瓜を吸わせるシーンが出てくる。
音を立てて勢いよく瓜にむしゃぶりつき、いつまでも吸っていたその姿を思い出すたびに胸が痛くなる。子どもは瓜に助けられ、日本に戻ることができたけれど、大陸の夏といえば瓜やキュウリというイメージは私の中にずっとある。
『僕の!中国ローカル生活』での、街のあちこちでキュウリを堂々と食べ出す豪快でのどかな中国人たちの姿は、うらやましくなるほどだ。
世界は都市化し、光景はだんだん似た感じになっているけれど、中国ではキュウリ、日本ではおにぎり、駅のベンチで食べ出すもので、国の違いが出るものなのかもしれない。
(文・内藤みか)
http://news.ameba.jp/20170811-353/