北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過する悪夢が現実になるかもしれない。

 北朝鮮は9日、グアム沖30〜40キロ沖に新型中距離弾道ミサイル「火星12」を4発同時に発射する作戦案を「検討中」と警告した。朝鮮中央通信は10日、ミサイルが発射された場合、島根、広島、高知3県の日本上空を通過すると報道、不測の事態を招きかねない。

 情勢は一気に緊迫した。トランプ米大統領を本気にさせる「レッドライン(越えてはならない一線)」の一つとされる、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に北が成功したのは7月4日だった。

 「この男は他に、やることはないのかね」。トランプ米大統領はツイッターでこうつづった。

 ICBM発射に立ち会った金正恩朝鮮労働党委員長は、実験成功をうたいあげ、「今後も贈り物を送ってやろう」とうそぶいた。

 それからわずか3週間余りの7月28日、今度は深夜(日本時間午後11時40分)にICBMを日本海に撃ち込んだ。金正恩氏は「米本土の全域が射程圏にあることが立証された」と宣言した。

 韓国の文在寅大統領はミサイル発射を受け、国家安全保障会議(NSC)を招集、韓国独自の対北制裁を検討するよう指示した。北朝鮮との対話に固執してきた文氏だが、さすがに現実路線へと方針転換を余儀なくされた。

 文氏は韓国で配備が始まった米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」について配備済みの2基からの増強を米国側と協議するよう指示し、韓国軍は在韓米軍に保管中の4基を追加配備することを発表した。

 7月29日、トランプ氏がついに中国を見限った。ツイッターに「中国には非常に失望した」と投稿したのだ。

 トランプ氏は「過去の米国の愚かな指導者が、貿易で中国に年間何千億ドルもの利益を上げさせたのに、中国は北朝鮮に関し、米国に良いことを言うばかりで何もしてくれない」と指摘。

 その上で、「このような事態が続くのは認められない。中国はこの問題を容易に解決できたはずだ」と訴え、中国に対して何らかの措置に踏み切る可能性を強く示唆した。

 しかし、トランプ氏の過度な中国頼みは、オバマ政権が取った「戦略的忍耐」と「何もやらない」という意味では同じだ。 

 これに対し7月31日付の環球時報は、トランプ氏が中国への不満を強めていることを「全く理不尽」と批判する社説を掲載した。中国は国連安保理の制裁決議を「厳格に執行」していると強調したうえで、「中国だけで解決できるものではない」と無力さを装った。

 各国が動きを見せる中、心胆寒からしめるニュースが8月2日、飛び込んできた。

 複数の米メディアは、北朝鮮が7月28日に発射したICBMが北海道沖の日本海に落下する数分前に、東京発パリ行きエールフランスのボーイング777が付近を通過していたと報じた。300人以上が乗っていた。米CNNテレビなどは「旅客機に危険が及ぶ可能性もあった」と報道した。

 北ミサイルはもはや人命を脅かすぶ状況になっているのだ。日本の排他的経済水域(EEZ)に落下して今まで無事だったのは幸運でしかない。

 国連安全保障理事会は8月5日午後(日本時間6日午前)、北朝鮮の主産品である石炭や海産物などの輸出を全面的に禁止する制裁決議案を全会一致で採択した。米国のヘイリー国連大使は「過去最大の経済制裁だ」と強調、中国とロシアも最終的に同意した。

 米国民の意識も変わってきた。

 CNNテレビの最近の世論調査によると、北朝鮮が米本土に到達しうるICBMを開発していることに対して、米国が軍事行動に踏み切ることが望ましいかを聞いたところ、50%が賛成すると答え、反対は43%だった。支持政党別では、共和党が賛成74%、民主党が賛成34%だった。

http://www.sankei.com/world/news/170812/wor1708120010-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170812/wor1708120010-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170812/wor1708120010-n3.html
http://www.sankei.com/world/news/170812/wor1708120010-n4.html

>>2以降に続く)