2018年2月の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪開幕まであと半年。開催予定地では大会施設の整備が大詰めを迎え、外国人観光客の受け入れ準備も着々と進む。一方、チケット販売はまだ目標の2割で、国全体の「五輪熱」は上がらない。大会関係者はムード盛り上げに腐心する。

7月下旬の平日夕。首都ソウル発の高速バスに乗った。朝鮮半島を横切る高速道路を東進すると、約2時間でスキーなどの雪上競技が行われる平昌郡に到着した。

平昌郡は韓国北東部の山岳地帯で、山あいにスキー場やプールを備えたリゾートホテルが点在し、ウインタースポーツを楽しむ場や避暑地として知られる。

大会組織委員会が事務所を構える横渓(フェンゲ)。食堂や衣料品店などが並ぶメインストリートを抜けると、広大な更地のそばに開会式に使われる「オリンピックスタジアム」が建つ。

スタジアムは五角形の広場を3万5千人収容の観客席が囲む。7階建ての屋内スタンドでは、内装工事を慌ただしくこなす作業員の姿があった。工事責任者によると、7月下旬時点の完成率は87%。9月末に竣工する見込みだ。

競技施設に関しては既存、新設ともに完成率が95%超。「いつでも競技が行える状態」(組織委)という。

今年12月に高速鉄道が開業すると、仁川国際空港―平昌間が約1時間半で結ばれる。横渓の飲食店従業員、ヤン・ダバイさん(26)は「町並みが日を追うごとに新しくなっている。五輪がもうすぐだと実感する」と声を弾ませる。

大型ホテルの建設工事も相次ぐ。大会期間中は平昌とスケートなどの氷上競技が行われる沿岸部の江陵(カンヌン)市などで約4万2千室が稼働見込みという。

江陵市の韓国風しゃぶしゃぶ店「チェソンダン」は昨年、欧米系の利用者に配慮して板張りの座敷をテーブル席に変更した。店長のホ・ヒスクさん(50)は「韓国を好きになってもらえるように丁寧な接客を心がけたい」と意気込む。

一方、観戦チケットの発売枚数は8月初旬時点で約22万8000枚と最終的な目標の2割。うち韓国の国内向けは約5万1000枚で目標の1割にも届いていない。

ソウル市の女子高生(18)は「ウインタースポーツはやったことがない。冬季五輪は興味が湧かない」と話す。

また前大統領の弾劾・罷免で新政権が発足。北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験を繰り返す。江陵市の自営業男性(48)は「五輪の話題は埋没しがち」とこぼす。

五輪は今後、2020年東京夏季、22年北京冬季とアジアでの開催が続く。組織委のナンシー・パク広報担当は「本番に向けたムードを盛り上げ、平昌五輪を成功させたい」と力を込めた。

(桜田優樹)

▼平昌冬季五輪 2018年2月9日〜25日の日程で開催する。韓国で五輪が開かれるのは1988年のソウル五輪以来約30年ぶりで、冬季大会は初。パラリンピックは3月9日〜18日。
韓国北東部、江原道(カンウォンド)の山岳地帯に位置する平昌郡と旌善(チョンソン)郡でスキーやそりなどの雪上競技を行う。隣接する沿岸部の江陵市ではスケート、カーリングの氷上競技が開催される。
アジアでの冬季五輪開催は72年の札幌、98年の長野に次ぐ3回目。

https://style.nikkei.com/article/DGXLASDG03HCB_X00C17A8CR8001