【北京・川原田健雄】中国でスマートフォンアプリを使って代金を支払うスマホ決済の利用者が5億人を超えた。政府系機関の調査で分かった。偽札の多さを背景にキャッシュレス化が進む中国だが、スマホ決済を悪用した犯罪が頻発し、負の側面も浮き彫りになっている。

野菜や果物の露店が所狭しと並ぶ北京市内の朝市。多くの店頭にはQRコードが掲げられていた。

中国インターネット大手の決済システム「支付宝(アリペイ)」「微信支付(ウィーチャットペイ)」のものだ。銀行口座と連結したスマホでQRコードを読み取り、金額を打ち込んでボタンを押すと支払いが終了する。

朝市で野菜を売る店主は「若い人はほとんどスマホで払う」と話す。偽札が珍しくない中国では、小さな店も紙幣判定機でチェックしているが、「スマホ払いなら心配しなくていい」。

政府機関直属の中国インターネット情報センターがまとめた調査結果によると、6月末のネット利用者は2016年末から2・7%増の7億5100万人。うち5億200万人がスマホ決済を利用した。

飲食店の他、タクシーや病院、公共料金の支払いなど幅広い分野で利用されており、QRコードを示して施しを求める「ハイテク物乞い」も話題となった。

一方で新たな犯罪も生まれている。国営通信新華社などによると、昨年10月、北京市で無断駐車の罰金を命じる偽のQRコード付き警告書を車に貼られた女性が、スマホで払いそうになる詐欺未遂事件が発生。

3月には福建省で、シェアリング自転車に付けられた偽のQRコードを読み取った70人が計約3200元(約5万円)をだまし取られた。

7月には重慶市の複数の店舗で、店頭に掲げた正規のQRコードの上に、偽のQRコードのシールが貼られ、計約1万元を盗まれた。いずれもスマホ決済の手軽さと利用者の警戒心の薄さを突いた手口だ。

専門家からは「スマホに慣れていない高齢者はキャッシュレス社会の到来を望んでいない」との指摘がある。

スマホ決済は取引履歴が記録されるため、当局が金の流れを把握しやすくなり、犯罪防止につながるとの見方がある一方、履歴が個人監視に利用されるとの懸念も出ている。

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