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新疆での「ネット浄化」

中国政府(あるいは習近平政権)が目指すネット管理の究極の姿がどこにあるのか。その実験場とも言えるのが民族問題を抱える新疆ウイグル自治区だ。新疆では2009年7月、大規模な暴動が発生、当局は翌年5月末まで「断網」と呼ばれるネットの遮断を行った。

そして最近では、ネットユーザーの動向を監視するアプリの強制インストールを行っているという。ウェブサイト「グローバル・ボイス・オンライン」によると、新疆ウイグル自治区ウルムチ市天山区の住民は、スマトーフォンに当局がユーザーを監視するための「ネット浄化」アプリのインストールを強要されたという。

警察は、このプログラムは情報源やその拡散経路の追跡捜査が可能だと通達、その情報として「違法な宗教」活動や「有害な情報」が含まれるとした。当局が全国的にテロ対策を強化、特に新疆自治区を重点対象としていることや、さらには中国政府がネットへの監視を不断に強化していることが背景にある。

天山区のスマホユーザーは7月10日に自治区政府のメッセージを受信、「浄網(ネット浄化)衛士」という名の監視アプリをインストールするよう指示があった。

当局は「住民がテロ情報を得るのを防ぐ」のが狙いとしているが、同自治区のイリ・カザフ自治州ではカザフ族の女性10人がスマホアプリ、微信により情報を流したとして逮捕された。彼女たちの携帯にはこの「浄網」が入っていたという。

同サイトが紹介したツイッター情報によれば、新疆各地では当局が人々のスマホをチェックし、このアプリが入っているかどうかを確認、インストールしていない場合は勾留などの処分が科されたという。このツイッターアカウントは「新疆の人々のスマホは『浄網』インストール後、“電子手錠”となった」と批判している。

AIついに蜂起?

だがこうした行き過ぎた規制は、それに対する反発を生む。その1つの事例となったのが、AI(人工知能)の“反逆”だった。

VOAなどによると、微信で知られる中国の大手ネット企業、騰訊(テンセント)のソーシャルメディア「QQ」のチャットボット(AIを利用した自動会話応答プログラム)「BabyQ」と「小氷」は、ネットユーザーから共産党を熱愛しているかどうか尋ねられたのに対して、“政治的に不正確な”回答をしたため、サービスが停止された。

BabyQは天気、交通などの情報を提供、ユーザーとの相互交流による自己学習能力があるという。だがネットユーザーが「(共産)党を愛しているか」とたずねたのに対し、BabyQは「愛していない」と答え、網民はこれを「AI起義(蜂起)」と呼んだ。

小氷はマイクロソフトが開発したが、敏感なテーマではBabyQ同様「政治的な誤り」を犯し、「中国の夢とは何か」との問に「米国に行くこと。本当です」と答えたという。

香港紙、リンゴ日報(電子版)によれば、テンセントの元従業員は、これらのチャットボットは海外の“不良サイト”を訪問、そこで(民主主義や言論の自由といった)普遍的価値など“中国的特色”ではない話題を覚えたのではないかと指摘。

だが、こうした事件を機に将来は人工知能も“壁の中と外”の区分がされるようになり、「グーグル中国と同様、中国の壁の中のコンテンツのみ、アクセスが許されることになるだろう」と指摘した。

ネット上で不慮の事故頻発

さらには日本で報じられなかったが、次のような事件もあった。

1日に開かれた人民解放軍建軍90周年記念大会で、習近平国家主席(共産党中央軍事委員会主席)が演説した際、その様子を放映していた中国中央テレビの画面が突然右下に移動、原稿のプロンプターが映し出された。

そしてプロンプターの画面には「?然不?(しっかり立って微動すらしない)」という熟語の読みが「?(発音はkui)」だとこっそり教えていたことが明るみに出た。この画面はユーチューブでも確認することができる。

習近平の読み間違いには“前科”があり、昨年杭州で行われた20カ国・地域(G20)首脳会合でも、各国首脳を前に「通商寛農」(貿易を盛んにし、ゆとりある農政を行う)という古典の文言を「通商寛衣」と読み間違えた。

「農」の中国語簡体字「?」が「衣」と似ているために読み間違えたようだが、「寛衣」は「服を脱ぐ」という意味になり、古典の意味も分からないまま棒読みしたとして、習近平の教養レベルに対しネットで笑いの種になった。

(続く)