●「食の見直しを」 年代別の理想型を提案

体調維持が要となる受験前など、大切な時期を乗り切る食として取り上げてきた薬膳。その最新の研究成果や可能性を発信する博覧会「YAKUZEN EXPO2017」が9月1〜3日、福岡市博多区で開かれる。

薬膳研究に長年取り組んできた中村学園大(福岡市)と、学術交流協定を結んでいる上海中医薬大(中国・上海市)の共催で、中村学園大の薬膳科学研究所は「食がもたらす健やかな暮らしを具体的に提案する場にしたい」と語る。

薬膳は中医学(中国の伝統医学)の「薬食同源」の考えに基づき、主に漢方薬を使った中国料理を指す。博覧会は、この薬膳と、日本の「一汁三菜」を融合した日本型薬膳を提案することを柱とする。

薬膳科学研究所の徳井教孝所長によると、和食の典型「一汁三菜」はもともと、ご飯で炭水化物、主菜でタンパク質、副菜でビタミン・ミネラルといった具合に栄養バランスが良く、四季それぞれの旬の食材を取り込んでもいる。

古くからの和食の在り方は「気候、季節、体質に合った食材を組み合わせて健康につなげる」という薬膳の考えとも通底する。

和食で重要な役割を占めるみそや納豆、ぬか漬けといった発酵食は、近年研究が進む腸内環境の改善につながることも分かってきた。

研究所は、こうした先人の知恵と最新の栄養学、西洋医学による裏付けを組み合わせた健康モデル食を日本型薬膳と位置づけ、海外にも積極的に紹介する試みを続けている。博覧会のアルファベット表記「YAKUZEN」にも、そうした狙いを込めた。

当日は展示会会場のライフステージゾーンで、乳幼児期から老年期まで五つの年代別に理想食を提案する。研究の中心となってきた三成(みなり)由美(よしみ)教授は「子育て世代や高齢者向けなど時代を見据えた内容で、ぜひ参考にしてほしい」と話す。

今回の博覧会は、料理ショーや料理教室など、薬膳に気軽に親しめる参加型の催しが多いのも特徴。料理ショーは美容、腸内環境の改善、老化防止と日替わりのテーマで著名な料理家が実演する。

料理研究家のコウケンテツさん(2日午後0時半)、中華料理の老舗「聘珍樓(へいちんろう)」(横浜市)の元総料理長、謝華顕さん(1日午前11時、午後2時)らが舞台に立つ。

最新の研究成果を紹介するシンポジウムのほか、自由に参加できるセミナーもある。腸内環境に詳しい辨野(べんの)義己・理化学研究所特別招聘(しょうへい)研究員は1日午後3時20分、2日午前10時半の2回登壇する。

上海中医薬大は独自に開発した体質診断アプリ「魔法の鏡」を日本初公開する。舌の色や形を見る診断術を、センサーを使ってアプリ化したという。

博覧会は、薬膳の将来の姿も見据える。徳井所長によると、太りやすい体質に関係する「倹約遺伝子」の確認など栄養学も日々進歩している。薬膳も例外ではない。「会場で最新の情報を得て、食を見直すきっかけにしてほしい」と話している。

●イベント概要

▽時間、内容など詳細はウエブサイトで。

■シンポジウム・市民公開講座

(会場=福岡国際会議場)

1日午前10時〜12時半 特別講演=中医薬健康事業の国際的な発展およびそのニーズ▽シンポ=YAKUZENと腸内環境。入場料1000円。

2日午前10〜12時▽講演 和食の精神(熊倉功夫さん)▽講演 日本人と海藻と寒天(井上修さん)。入場無料。

午後1〜4時▽講演 ロイヤルと日本の食産業の歩み(菊地唯夫さん)。入場無料。

■展示会・セミナー

(会場=福岡国際センター)

3日間有効の入場券一般500円、小学生以下無料。

【フードコート】薬膳のカレー、パン、サムゲタンなどを提供。

【クッキングゾーン】料理ショーと料理教室。

【ライフステージゾーン】乳幼児、学童、青年、壮年、老年の年代別に薬膳を提案。来場者限定の薬膳レシピを配布。

https://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/351282/

>>2以降に続く)