事色を排した「戦場閲兵」

中国人民解放軍(解放軍)の創建は、1927年に朱徳将軍などが南昌(江西省)で蜂起した8月1日を起点としている。

本年、解放軍は創建90周年を迎えたが、記念行事は大規模な軍事演習に続く同演習基地内での軍事パレード(観閲式、閲兵式)と北京の人民大会堂での盛大な祝賀式の2段階にわたって実施された。

さらに観閲式も北京ではなく内蒙古自治区内のアジアで最大規模の演習基地で実施されており、異色ずくめの記念行事の実態や狙いが注目される。

そもそも解放軍が観閲式を最初に実施したのは国民党軍との革命戦争に勝利し、49年10月1日の建国宣言後に合わせて毛沢東によって実施されたものであった。

その後、断続的に毛沢東によって11回挙行され、文化大革命の混乱後は84年にケ小平によって陸・海・空軍だけでなく戦略核弾道弾部隊や武装警察部隊、女性民兵なども含めた武装勢力の本格的な観閲式が建国記念行事として再開された。

次いで99年には建国50周年記念として江沢民によって、建国60周年記念は2009年に胡錦濤によって、いずれも10月1日の国慶節の祝賀行事の一環として挙行されたものである。

習近平時代になって建国70周年記念を待たずに、16年9月4日に「反ファシスト・抗日戦勝利記念」を掲げながら実質的には「抗日戦勝利記念」として観閲式が開催された。

今夏の観閲式(7月30日)は16回目となるが、まさに解放軍の建軍記念に焦点を当てた行事であった。同時に近年習主席が進めてきた軍事改革の成果―軍に対する党優位の確立と統合作戦能力の強化―の確認の狙いも見て取れる。

観閲式は、100平方キロの広大な内蒙古・朱日和訓練演習基地の一角に観閲台が構築され、大規模な演習終了後に1万2000人の兵士、600余の兵器装備と100余機の作戦機が登場した閲兵式であった。

それは華麗な服装の北京でのパレードとは異なり、行事色を排した異例の実戦的観閲式で習主席から「戦場(原語は沙場)閲兵」と呼ばれていた。

受閲部隊の指揮は中部戦区司令官の韓衛国大将が執り、28人の少将が指揮する徒歩部隊9個を含む36個の戦闘装備隊が地上行進をした。

地上パレードで見せた兵器などは99A式戦車を先頭に04A裝軌式歩兵戦闘車、海軍からも水陸両用戦車、艦載用の9B型艦対空ミサイルや62A型沿岸配備用対艦ミサイルなどが車載で参加した。

空軍からは空挺降下用の戦車や新対空ミサイル、高性能レーダーなどが出現した。

またロケット軍では北米大陸を射程とする車載大陸間弾道ミサイル(ICBM)として東風31A号からグアムを射程に収める中距離弾道ミサイル(IRBM)東風26号の出現、

さらに空母キラーと呼ばれる弾頭の終末誘導ができるとみられる東風21D号、長剣10対艦巡航ミサイルなどが注目された。

閲兵を受けた600余の兵器装備の40%が初見参の新兵器と言われているが、公開された資料では判別は難しい。

昨年の反ファシズム勝利記念観閲式で見られたものと大差ない装備が多く、兵器などの表面写真では識別できない内蔵部分の性能の向上があるのであろう。

さらに空中パレードでは東北や華北の6個の飛行基地から発進した陸海空軍の各種作戦機が空中突撃梯隊(ていたい)など6個の梯隊で観閲飛行をした。

陸軍から攻撃ヘリなど、海軍から空母艦載機「殲15」など、空軍からは早期警戒管制指揮機「空警500」、新型長距離爆撃機「H6K」、ステルス形状の次世代戦闘機J20や運20国産大型戦略輸送機など14形式の作戦機が注目された。

今次の観閲式は従来とは異なり国内外の賓客や大観衆がいない、習主席だけが閲兵する「戦場閲兵」であったが、習主席は「われわれは歴史上どの時期よりも中華民族の偉大な復興という目標に近づき、強大な人民軍隊の建設を必要としている。

世界一流の軍隊にしなければならない」と訓示し、「われわれの軍隊は侵略してくるあらゆる敵を撃ち負かす自信と能力がある」と胸を張った。

http://vpoint.jp/opnion/viewpoint/94076.html

>>2以降に続く)