日本の国土が次々と中国などの外国資本に買収されている。背後にあるのは、習近平国家主席の新シルクロード経済圏構想「一帯一路」だ。

国土があってこそ国が存在する、このあたりまえの事実を、私たち国民はどこまで認識しているだろうか? 最新刊『頼るな、備えよ――論戦2017』が発売された櫻井よしこ氏が語った。

すでに日本の土地はかなり中国に買われている

以前の衆院予算委員会(2016年10月4日)で安倍晋三首相が、外国人や外国資本による森林や水源地の買収が急速に進んでいる事態について問われ、こう答えたことがある。

「安全保障上、重要な国境離島や防衛施設周辺での外国人や外国資本による土地取引・取得に関しては国家安全保障に関わる重要な問題と認識している。水源の保全についても重要な観点と思っており(対応を)検討していきたい」

国家の安全保障上、外資による国土買収がどれほど懸念すべき事態であるかは長年、指摘されてきた。民間の側からの警告や提言はこの10年間、頻繁に発せられ、私自身も少なからぬ与野党議員に立法を働き掛けてきた。

平成25(2013)年には日本維新の会の中田宏氏が法案を提出した。自衛隊、海上保安庁、原子力発電所周辺の土地は危機管理上、A分類に指定し、政府の許可なしには取引不可とする。そのほか水源地など国家的に重要な土地はB分類に指定し、国が監視できるようにするという内容だった。

中田氏らはもっと厳しい内容にしたかったのだが、外務省の失態でそれは不可能だということが判明した。わが国は世界貿易機関(WTO)加盟時、何も条件をつけずに加盟したからだ。各国の事例を見ると、その国にとって譲れないことを加盟の条件としてつけている。

たとえば、「国土は外国人には売らない」「国土は売るがそれは互恵平等の原則による」などだ。

こうすれば、国土を売らない選択も、あるいは、中国は売らないのだからわが国も中国資本には売らないという選択もできる。外務省はこのようなことも考えずに、WTO加盟を進めた。

こうした制限ゆえに、中田氏らの法案はどうしても完璧にはなり得なかった。それでもないよりずっとましだった。だが法案は、国会に上程されても、まったく審議されずに廃案になった。

中国は国家レベルで「日本の土地」の買収を進めている

「(法案が)つるされちゃって」──と、廃案で一件落着であるかのように語った自民党議員、外資による国土買収への対処のことなど、まったく念頭にないかのように構えていた旧民主党議員──。こうした政治家の顔がいまも脳裡に浮かぶ。

国土が外国資本、とりわけ中国人に買収され続けている事態を、事実上放置し続けて現在に至っていることに関しては、日本の政治家のほぼ全員に重い責任がある。

国土を買い取られることは、国を奪われることだ。わが国の国土を猛烈な勢いで買い取る中国の意図を注意深く読み取るべきだ。北海道で数百ヘクタールの土地が買われた、水源地が買われたなどの個別の現地情報を追っても全体像は見えない。

日本列島全体で、離島、水際、戦略的な土地を中心に中国の買収の手が広がっている。中国の膨張政策がわが国の国土買収に反映されているのは間違いないだろう。

「産経新聞」の宮本雅史氏、『日本、買います』(新潮社)の著者である平野秀樹氏なども指摘するように、沖縄県での中国資本による買収は凄まじい。鹿児島県奄美でも長崎県五島列島でも、島根県隠岐、北海道、新潟県佐渡でも同様だ。中田氏が語る。

「2013年、私は対馬の問題を国会で取り上げました。自衛隊基地周辺がほとんど韓国資本に買われている現状を指摘し、政府の対応を求めました」

そのときの安倍首相の回答は、今回とほとんど変わらない。変わらないということは、この3年間、政府は何もなし得ていないということだ。

安倍政権が大きな課題に挑戦してきたことは確かだ。しかし中国資本に日本を買い取られないために、いま首相の本気度が問われている。

http://diamond.jp/articles/-/138037

>>2以降に続く)