今年4月まで弾道ミサイルの発射実験に4回連続で失敗していた北朝鮮は、5月以降、5回連続で実験に成功。最近までICBMの完成は3年先とみられていたのに、急速に技術を進展させた。その「立役者」はウクライナだったようだ。

先週、英国際戦略問題研究所(IISS)のマイケル・エルマン専任研究員が、北朝鮮のICBM「火星14」には旧ソ連製のロケットエンジン「RD250」の改良型が使われている可能性が高いとする分析結果を発表。

「RD250」の製造に携わっていたのはウクライナの国営企業で、過去2年以内にウクライナから闇市場を通じて北朝鮮に流れた可能性があると指摘している。

「恐らくエルマン氏の分析通りでしょう。旧ソ連時代、ウクライナはICBMや装甲車などの兵器を製造する軍事産業の集積地でした。技術力には定評があり、ソ連崩壊後も兵器製造を主要産業とし、ロシアを大口の取引先にしてきました。

ところが、3年前のクリミア侵攻でロシアとウクライナの間に対立が勃発。得意先のロシアに兵器が売れなくなってしまったことで、ウクライナの兵器と優秀な技術者が闇市場を通じ北朝鮮に流れたと考えてもおかしくありません」(軍事ジャーナリストの世良光弘氏)

核とICBMの開発を急いでいる金正恩は、旧ソ連の軍事技術の粋を集めたウクライナの兵器は喉から手が出るほど欲しかったはずだ。2011年には、北朝鮮の工作員2人がウクライナの工場からロケット技術に関する文書を盗み出そうとして摘発されている。

■中国の「遼寧」もウクライナ製

ウクライナのICBMが北朝鮮に渡った可能性が浮上し、今頃、トランプ大統領は真っ青になっているはずだ。

「高度な軍事技術を持つウクライナの国営企業は、ICBM以外にもさまざまな兵器を製造しています。中国が誇る空母・遼寧ももともとウクライナから購入した空母を改修したものです。

また、ソ連崩壊後に、短期間とはいえ世界3位の保有国だったウクライナには、当然、核技術もあるでしょう。最近、北朝鮮がICBMと同時並行してSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の開発を急ピッチで進めているのも、ウクライナの協力かもしれない。

北朝鮮の背後にウクライナの影を察知したことで、米国は警戒を一段と高めていると思います」(世良光弘氏)

北朝鮮はとんでもない軍事力を手に入れてしまったかもしれない。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211890/1

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4月の軍事パレードでお披露目したICBMはホンモノだった可能性が急浮上(C)AP