【北京=藤本欣也】中国政府は23日、自国企業に対する米国の独自制裁に強く反発する一方で、北朝鮮産の海産物禁輸により中国側がいかに経済打撃を受けているかを国内メディアを通じて宣伝、国連安全保障理事会決議の厳格な履行ぶりをアピールしている。

中国外務省の華春瑩報道官は同日の記者会見で、「国連安保理の枠組み以外での一方的制裁に反対する」と米国の措置を批判した上で、こうした独自制裁は「北朝鮮問題における中米間の相互信頼と協力にとって利益にならない」と述べ、即時撤回を要求した。

その一方、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は同日付で、中国が安保理決議を順守し15日から北朝鮮産海産物の輸入を停止した結果、中朝国境の吉林省琿春(こんしゅん)市や遼寧省丹東市近郊の市場が大きなダメージを受けていると報じた。

琿春市のある業者は十数トンのスルメイカを北朝鮮から突然、輸入できなくなり、約200万元(約3280万円)の損失をこうむったとみられるという。同紙は全体で500トン、2億〜3億元の損失が見込まれると推計している。

9月1日まで禁漁期が続く丹東市近郊の漁港、東港の海鮮市場でも、当てにしていた北朝鮮産の海産物を入荷できず、9割近くの店が臨時休業に追い込まれたとしている。

中国メディアはこれまでにも、海産物を積んだトラックが15日以降、北朝鮮から中国側に戻れなくなり、国境付近で立ち往生していると報道。税関当局の厳格な審査を強調している。

また環球時報によると、北朝鮮の外貨獲得源だった海産物の貿易収入の道が閉ざされることで、北朝鮮国民の生活にも悪影響がおよび、北朝鮮から中国への違法越境者が増えることを懸念する声も上がっている。

http://www.sankei.com/world/news/170823/wor1708230044-n1.html
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鴨緑江の中朝国境にかかる友好橋の前で列を作り、検問所を通過するトラックや車=2016年3月、中国北西部の遼寧省大同(AP)