北朝鮮の核・ミサイル問題の解決のカギを握っているのは中国である、と信じられている。米国はジョージ・ブッシュ政権時代から中国に働きかけてきた。

ドナルド・トランプ政権は発足後、バラク・オバマ政権の北朝鮮政策を批判しつつも、中国に解決を促すという点では同じ方針であり、しかも従来より強く中国に働きかけている。去る4月の首脳会談で、トランプ大統領は中国の習近平主席に説得を試み、またその後も電話で話し合っている。

日米の首脳も外相も、北朝鮮問題について協議するたびに、中国が北朝鮮に対する圧力を強めるように求めることで合意している。8月17日、ワシントンで開催された安全保障協議委員会(2+2)でも、日米両国は中国に対し、北朝鮮の一連の行動を改めさせるよう、断固とした措置をとることを強く促した。

しかし、そのようにしても、効果は上がっていない。それどころか、北朝鮮はますます大胆になり、7月4日には米国が最も警戒する、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の実験を成功させた。

「双方自制し、話し合いで解決を」

中国を通じて、北朝鮮の核・ミサイル問題を解決するという方法は、なぜ効果を出せないのか。それには、中国自身はどのようにこの問題を解決しようとしているのかを、検証してみる必要がある。

国際連合で新しい制裁決議が採択された直後の8月7日、中国の王毅外相はマニラで、新制裁決議を中国は忠実に実行すると述べつつ、「米国と北朝鮮の双方は自制し、軍事力に頼るのでなく、話し合いで解決すべきだ。(中略)朝鮮半島の核問題の核心は安全保障である」と発言した。

これは、中国がかねてから繰り返してきたことであり、公式の立場である。

この発言にはすでに、米国との考えの違いが表れている。

前段の「話し合いによる解決」については、米国はまだ開始する条件が整っていないと見ているが、レックス・ティラーソン国務長官は何回も北朝鮮との対話に関する発言をしているし、そもそもトランプ大統領も何回か言及したことで、中国との考えの相違は、程度問題である。

一方、後者の「朝鮮半島の核問題の核心は安全保障だ」という点は、中国だけが言うことで、米国はそのようなことはまったく口にしない。米国はそのようなことは言及するに値しないと思っているのか、あるいはそのほかに理由があるのか、不明だが、ともかく中国が言っても、完全に無視する形になっている。

中国が言う「安全保障が核心」とは北朝鮮のことか、米国のことか、日本のことか、この言葉だけではわからない。が、中国が米国や日本の安全保障を代弁するはずはなく、北朝鮮のことを言っているのは明らかだ。つまり、王毅外相は、「北朝鮮の核問題の核心は北朝鮮の安全保障だ」と言っているのである。

安全保障のために核を開発しているというのは、北朝鮮の立場であるが、中国もその点については同じ考えなのだ。中国がそこまで言えばわかりやすいのだが、「核問題の核心は安全保障だ」で止めているのは、中国として北朝鮮の核を認めていると取られたくないからであろう。

つまり、中国は北朝鮮の核・ミサイルの開発は積極的に賛成しているわけではないが、北朝鮮が安全保障問題を解決しないかぎり、核を放棄しないことはわかっているのである。
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このことにとどまらない。子細に検討していけば、中国と米国の間にはさまざまな違いがあることが見えてくる。

まず、国連決議について両国は表面的には一致しているのだが、「決議を完全に履行すれば北朝鮮問題は解決するか」という問題になると、大きく違っており、米国は解決するという立場である。一方、中国は、国連決議で北朝鮮問題が解決するとは思っていない。

それは、王毅外相の言葉にも表れている。新制裁決議を中国として忠実に履行すると言明しつつ、その後でわざわざ「核問題の核心は安全保障だ」と述べた。

ちなみに国連決議は、核・ミサイル問題の解決の必要性を訴えているが、北朝鮮の安全を確保することは論じていない。中国が国連決議だけで北朝鮮の問題は解決しないと見なすのは一理あることなのだ。

http://toyokeizai.net/articles/-/185496

>>2以降に続く)