>>1の続き)

ということは、これまでの日米同盟の戦力構成、すなわち「自衛隊の防御能力」プラス「アメリカ軍の打撃能力および防御能力」(しばしば「日本が盾、アメリカが矛」という表現がなされるが、アメリカ軍自身も強力な防御能力を保持していることは言うまでもない)では、

もはや中国軍や北朝鮮軍の対日軍事的脅威を威嚇することはできないということを意味している。

したがって、日米同盟の戦力をトータルで強化するには、これまで実施されることがなかった「自衛隊の打撃能力」を構築し、日米同盟の戦力構成を、「自衛隊の防御能力および打撃能力」プラス「アメリカ軍の打撃能力および防御能力」へと転換しなければならい。

もっとも、このような趣旨の同盟強化は、すでに2015年版日米防衛協力のための指針」に明記されている。だからこそ今回の2プラス2共同発表でも、あえて2015年版「日米防衛協力のための指針」の実施が強調されたものと思われる。

しかしながら、日本の国防・外務当局側には、依然として「日米同盟の強化」を「アメリカ側が喜ぶような施策を実施すること」と履き違えている感が否めない。すなわち、日本防衛の優先順位にかかわらず、高額兵器をアメリカから購入するといった事例が目立つ。

日本政府は、日本が「日米同盟を強化させる」ために必要なのは、「自衛隊に打撃能力を付加すること」との認識を明確に持ち、アメリカ側から注文される前になけなしの防衛費(もちろん防衛費総額の倍増は急務なのだが)を有効に活用していく責務がある。

北村 淳
戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。
ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は軍事社会学・海軍戦略論・国家論。米シンクタンクで海軍アドバイザーなどを務める。
現在安全保障戦略コンサルタントとしてシアトル在住。

(おわり)