2009年に米国を抜き、昨年は米国の約1.6倍、日本の約5.6倍と、世界最大の自動車市場になった中国で「2018年問題」が浮上している。

電気自動車(EV)など環境対応車を一定の割合で生産しなければ、ガソリン車の販売を認めない「新エネルギー車(NEV)規制」が導入される見通しだからだ。

日本勢が得意とするハイブリッド車(HV)を新エネ車対象から除外するなど、中国政府は、「NEV規制」を国内メーカーを育成する産業政策の「切り札」にする考えだ。

深刻化する大気汚染など環境問題への対応に加え、日米欧など海外メーカー系が牽引(けんいん)する市場で、国内メーカーに主導権を握らせたいとの狙いがある。

大半は地場メーカー

EVとプラグインハイブリッド車(PHV)を主な「新エネ車」と規定している中国は、これまで補助金制度やナンバープレート規制から外す優遇措置などを相次ぎ導入してきた。16年のNEV販売台数は約50万7000台で、前年比53%増だった。

一方、NEV販売の大半は中国地場メーカー製。業界団体はNEV市場が20年までに200万台になると見込んでいる。

その起爆剤となるのが、昨年発表された「NEV管理暫定規則案」。18年から国内、海外を問わず一定規模の乗用車を販売するメーカーに、中国でのNEV生産と販売を義務付ける内容だ。

18年にメーカーあたり総販売台数の8%、19年に10%を中国でNEV生産しなければ市場から締め出す。20年以降はさらにこの比率を高める規制だ。

上海市内で今年4月に開かれた上海モーターショー。中国のNEV規制にどう対応するかが大きなテーマだった。EV技術で先行する日産自動車の中国合弁会社の関潤総裁は、「18年以降、さまざまなタイプのEVを積極投入する」と強調。

ホンダの水野泰秀中国本部長も、「中国でEVを特急開発する」と前のめりの姿勢をみせた。トヨタも19年には中国でEV量産に乗り出す見通しとなっている。

中国でも注目を集めているEVベンチャーの蔚来汽車(ネクストEV)は、上海モーターショーにも出展した初の量販モデル「es8」を今年末に発売する。駆動モーターを前後に配置する四輪駆動方式。最長走行距離は300キロに達する。NEV規制を見すえた戦略という。

成長が鈍化

だが最大の問題は、中国のNEV市場そのものの将来性が不透明なことだ。NEV市場は急拡大したとはいえ、16年の中国市場全体の2803万台に対しては2%にも満たない規模。これが18年にいきなり8%に拡大するとは考えにくい。

NEV規制が厳格に適用されれば、ガソリン車を「需要があるのに売ってはいけない」事態となり、供給が不足すれば価格高騰など不測の事態を招く恐れがある。

しかも今年に入って、中国のNEV市場は成長が大きく鈍化し始めた。中国自動車工業協会によると、1〜6月のNEV販売台数は前年同期比14.4%増の約19万5000台にとどまった。

業界関係者は17年通年でNEV販売80万台を予想していたが、7〜12月も同様の販売動向とすれば予想の半分にも満たない。

16年に53%伸びたNEV販売の勢いがそがれたのは、補助金を不正に受給する手口が中国メーカーの間に横行していたことが発覚し、当局が補助金審査を厳格化したためだ。

さらに20年までに補助金を段階的に縮小して、廃止する方針も決めた。これまで「補助金頼み」だったNEV市場には激震が走った。

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>>2以降に続く)

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上海モーターショーに出展し注目を集めた中国電気自動車(EV)ベンチャー、蔚来汽車(ネクスト EV)=4月19日、上海市
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充電ステーションで充電中の電気自動車=中国・北京(AP)
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ホンダが「CESアジア」に出展したEVのコンセプト車「ニューヴィー」=6月7日、中国・上海(会田聡撮影)