トランプ米政権は北朝鮮の核開発プログラム阻止に向けた圧力をかける手段を探っており、米国の専門家の間からは中国の最大手クラスの石油会社や銀行が新たに制裁対象に加えられる可能性があるとの見方が出ている。

中国は北朝鮮にとって最大の貿易相手であり、金正恩体制を維持する上で決定的な役割を果たしている。2国間の貿易は今年1〜6月期(上半期)に前年同期比約11%増の25億5000万ドル(約2796億円)となった。

米政府はこれまでのところ、北朝鮮向けのマネーロンダリング(資金洗浄)に関わったとされる丹東誠泰貿易など、比較的小規模な会社を制裁対象としてきた。

しかし、中国の当局者は米国が中国石油天然気集団や中国銀行などの大手国有企業・銀行を対象に加えることを懸念している。

オバマ政権で大統領補佐官を務めたゲーリー・サモア氏は「トランプ政権の中国政府に対するメッセージは『中国が米国に協力しなければ今後も制裁は拡大する。中小企業だけでなく大企業も対象になる』というもの」だと説明。

さらに「中国の大手銀行に制裁を科せば米国経済にも深刻な影響が及ぶ」と懸念する。

オバマ政権時代に国務省でイランとの交渉担当者を務めていた米コロンビア大学世界エネルギー政策センターのリチャード・ネフュー氏は、

「中国銀行など大手金融機関を相手に争うようなことはばかげている。より重要な仕事が政府にはあり、このような大がかりな制裁は避けるべきだ」と指摘した。

米国による最も大規模な措置は、北朝鮮に石油を輸出する企業に対する制裁になるとみられる。

中国は北朝鮮に年間100万トン以上の石油を輸出しており、韓国エネルギー経済研究院の上級研究員、キム・ギョンスル氏によれば、この大部分は国営の中国石油天然気集団が関与している。

脱北者で、現在は世界北朝鮮研究所(ソウル)の所長を務める安燦一(アン・チャンイル)氏は、「中国の北朝鮮向け石油輸出停止は最後の切り札になる」とみる。

米政府が北朝鮮の核兵器および弾道ミサイル開発を支援したとして中国とロシアの個人および企業を新たに制裁の対象に加えたと発表したことを受け、中国外務省は23日、会見で公然と抗議した。

習近平国家主席には米国に対する報復措置をめぐって複数の選択肢があり、全面的な貿易戦争に発展する可能性もある。

アップルやボーイング、スターバックス、ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)などの米企業が制裁の影響を受けるリスクが高いとみられている。(ブルームバーグ Bruce Einhorn、Heesu Lee)

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中国・成都市内にある中国銀行の支店前を歩く男性ら。米国の北朝鮮制裁で、中国の大手石油会社や大手銀行が新たに対象に加わる可能性があるという(ブルームバーグ)