防衛省は8月31日、2018年度予算の概算要求を発表した。米軍再編費などを含め5兆2551億円で17年度当初予算に比べ2.5%増えた。厳しさを増す安全保障環境を反映し、過去最高を更新した。

北朝鮮による弾道ミサイルへの対応で迎撃体制を強化するため新装備の導入を進める。東シナ海などで挑発を続ける中国を念頭に、南西方面の体制強化を急ぐ。

小野寺五典防衛相は同日の省内の会合で「わが国の領土、領海、領空を守り抜く万全の備えを構築する。防衛力整備を着実に実施する事業を計上した」と述べた。

項目別で増加が目立つのは日々の活動を維持するための経費だ。装備の修理費は705億円増の6884億円、燃料購入費は204億円増の939億円を求めた。艦艇や航空機の活動量が増えているためだ。

北朝鮮の弾道ミサイルへの対応として、陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入方針を明記した。概算要求は金額を盛り込まない「事項要求」にとどめ年末までに費用を決める。

イージス艦から発射する海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の射程を伸ばしたミサイル取得費や、地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の能力を高めるための改修費も計上した。警戒管制システムの処理能力向上にも踏み切る。

護衛艦2隻と潜水艦1隻の建造費も求めた。イージス艦に搭載する防空用ミサイル「SM6」の試験弾薬の取得費、ステルス戦闘機を探知しやすくする次世代レーダーの開発費も新たに求めた。

離島奪還作戦を想定し、新たに島しょ防衛用の高速滑空弾や対艦誘導弾の技術研究も始める。無人偵察機「グローバルホーク」は導入中止を検討したが安保環境を考慮し導入経費を計上した。

宇宙状況を監視するレーダー設置に向けた準備費用や、サイバー防衛隊を40人増の150人とする費用も盛り込んだ。

奄美大島や宮古島に陸上自衛隊が新たに部隊を配備する費用も計上。陸海空の3自衛隊の統合運用のため、統合幕僚監部に連絡調整を担う部長級ポストを新設する。

https://www.nikkei.com/article/DGXLZO20632040R30C17A8PP8000/