8日の20日、21日と韓国を訪問してきました。

訪問の用事は来る11月の日韓・韓日友好議員連盟に先立っての、韓国側との打ち合わせ、幹事会への出席でした。

初日には新しい文大統領の元で国務総理に就任している李洛淵(イ・ナギョン)さんと、お酒を飲みながらいろんなことを語りました。李さんは国務総理になる前は、全羅南道という南の方の地域で、尊敬される著名な知事として有名な方でした。政治家になる前は新聞記者をされていた方で、駐日記者の経験もあります。日本のことについて非常に明るく、また日本に対してとても理解がある方でした。

経歴から予想できる通り、知日家で知られる李さんですが、大統領選挙中に対日関係で強硬的な発言を続けていた今度の文大統領は、この知日家の著名人を大統領を補佐する役割である国務総理に任命したわけです。このあたりを見ても、大統領の度量の深さが読み取れます。

日韓議連の幹事会のあとに我々議員団は文大統領を表敬訪問しました。文大統領は、非常に清潔感があふれており、頭も良く、日本のことについても熟知しているという感じが致しました。

かつての盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の側近として活躍された方であり、また、盧武鉉大統領が裁判にかけられたときには弁護団の幹事として活躍された方でもあります。度量の大きさと、現実を見る目の確かさなどを見ますと、極めて優秀な政治家だという印象を受けました。

いま韓国が抱えている問題としましては、何と言っても北朝鮮との問題です。金正恩(キム・ジョンウン)が何をするかによって世界が大変な混乱を迎えるかもしれないという、日々大きな危険にさらされているわけであります。

そこでこの金正恩氏というのは、言ってみればピストルをもった赤ん坊のようなものであって、周辺の大人と話をしない。自分一人で何をするか分からない。それが大変な脅威になっているわけです。

この彼が世界から孤独に陥っている現状を見ますと、彼の相談役となるような人物が必要だと言えます。彼を孤独に陥らせないために、韓国の大統領が民族の同胞として、何かあるたびに彼に相談に乗ってあげる立場に立てば、少しは安心感も出るのではないかと思います。

私が思い出すのは、今から10年以上前、クリントン政権のときにワシントンを訪問した時のことです。そのときにウィリアム・ペリー北朝鮮政策調整官に会いました。元国防長官のこのペリー氏に、私は率直に質問しました。北とは軍事的に対立しているのに、なぜそんな対立相手に80億円ものお金を出して軽水炉の建設を許可するんですか。敵に塩を送るようなものではないですか、と。

彼はこう言いました。「国の経営において最も危険なことは、敵と何らの交渉もない没交渉になることだ。その危険に比べれば、多少の金を使ったとしても、軽水炉建設という相手に通ずるパイプをひとつもっていることが安心の材料になる。」これがクリントン政権の懐柔政策であります。相手とともに考える、相手との付き合いの中で相手が暴走するのを止める、これが期待されていたわけです。

いま韓国の大統領はそういうことをやれる立場にあるのではないか、と私は思います。一番よいのは、アメリカの大統領トランプ氏と金正恩が会って話をすることでしょう。ですが、これはそう容易く実現するとは思えない。ならば民族の同胞である韓国大統領が会うのが一番良いだろう。こう思うわけであります。

世界が毎日危険にさらされているこの状態は、解決せねばならない状況です。日本韓国中国ロシア、関係の国々が全員協力して、北朝鮮の暴走を止めなければならない。しかしチャーチルの語録にも「虎に乗った権力者は絶対に虎からは下りない、なぜなら虎に食われるからだ」という明言があります。金正恩はまさにそういう状況だと思います。自ら地位を去ることはないでしょう。

彼のふるまいが周辺諸国に外を及ぼさないよう、どのようにして安全な方向に閉じ込めるか、これが目下の課題なのです。

北の対応によって世界が揺さぶられております。なんとしてもこの異常な状態を解除しなければなりません。そして、それをやるのが政治であります。

竹本直一
衆・自民/自民党

http://blogos.com/article/243761/