しらじらしい原爆忌、終戦の日の鎮魂の祈り

■「北朝鮮」脅威名目で軍拡

6月の沖縄の「慰霊の日」に続いて今月は6日に広島、9日に長崎の原爆の日、そして15日に「終戦の日」があり、日本列島は原爆や戦争で命を奪われた亡き家族を思い、不戦を誓う鎮魂の祈りに包まれた。

安倍首相も全国戦没者追悼式で「戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない」と強調したが、しかし首相が現実にやっていることはその式辞がしらじらしい対話より軍事力重視の「戦争への道」だ。

それは折からの北朝鮮の弾道ミサイル対応でさらに鮮明に表れた。

「終戦の日」の翌々日の17日、防衛省が度重なる北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、軍備増強によるミサイル防衛体制の強化を打ち出し、さらにその日の米国での外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で日米同盟強化を確認したのだ。

■国会の論議もなく導入

ミサイル防衛体制の強化では、海上自衛隊のイージス艦に搭載している迎撃ミサイルを地上配備する1基800億円もする「イージス・アショア」を2基導入。イージス艦も現在の4隻を5隻に増、さらに日米が弾道ミサイルの警戒監視などで使用する人工衛星を守るため自衛隊に宇宙部隊を創設。

このほかに中国のステルス戦闘機などに対応するため、新方式の次期警戒管制レーダー試作費用に196億円の概算要求などが示されたのだ。

2プラス2では、北朝鮮への圧力強化と、日米防衛協力指針(ガイドライン)に基づき日本の役割拡大と貢献を確認。さらに尖閣防衛や米軍普天間飛行場の辺野古移設なども再確認した。

安倍政権は中国の脅威を理由に「安保関連法」などを強行。「専守防衛」から「戦争する国」に踏み出した。そして今度は北朝鮮の脅威を好機とばかりに日米同盟強化の名のもとに、国会での論議もないまま自衛隊の役割を拡大して金に糸目を付けず軍備増強し、「米軍の戦争」にどこへでも付いてゆく「軍事大国」の道を加速している。

「イージス・アショア」導入も、トランプ大統領の売り込みに応えたものであり、軍事費増は社会保障や経済政策を圧迫することになるだろう。

■一度配備されれば永遠に

がん闘病の映画監督の大林宣彦さん(79)は、先日の新聞のインタビュー記事で「戦争が近づいている時代になった恐ろしさを感じる」と不安と平和への思いを語っていたが、確かに平和団体や識者が「今の日本の脅威は中国や北朝鮮でなく、安倍首相だ」という皮肉はまさにその通りだと思う。

アメリカ第一の安倍政権により理不尽に米軍に差し出された辺野古の新基地などと一緒に、戦争となれば再び本土防衛の盾となる石垣のミサイル基地も、ひとたび配備されると今後市政が変わっても恐らく永遠に撤去は不可能であり、その再編拡充も自由だろう。

中山市長も早晩市長の座を去る。それを大勢の市民が歓迎する施設なら結構だが、逆に大勢の市民が嫌がる「迷惑施設」で市民を分断、対立させてまで永遠の置き土産にするのはやめてもらいたい。それをするなら市長の「日本一幸せあふれる石垣市」の看板はまさに虚偽であり、“絵空事”だ。

http://www.y-mainichi.co.jp/news/32134/