アジアのサッカー界で“盟主”を主張してきた韓国が窮地に立たされている。2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会のアジア最終予選で、日本が2−0でオーストラリアを下して6大会連続6度目の本大会出場を決めたのと同じ8月31日に、ホームのソウルで行われたイラン戦で0−0と引き分けたためだ。

最終戦は5日にアウェーで行われるウズベキスタン戦。敗れると、8大会続けてきたW杯出場が途切れる可能性もある。

韓国●、イラン●でロシア行きアウト

韓国が入る最終予選のA組は首位で勝ち点21のイランが既にW杯出場を決めている。韓国は4勝2分け3敗の勝ち点14。自動的に出場権が得られる2位につけているが、勝ち点12で並ぶ3位シリア、4位ウズベキスタンとは、わずかに勝ち点2差。最終戦でウズベキスタンに敗れると、3位以下に転落する。

A組のもう1試合は、イラン−シリア。韓国はウズベキスタンに敗れても、シリアがイランに勝てなければ、最終予選B組3位、北中米カリブ海4位と争うプレーオフに進むことができる。しかし、シリアがイランを破れば、4位となり、その時点でロシアへの道は完全に閉ざされることになる。

危機感募らせる韓国メディア、日本と対比も

こうした状況を受け、韓国メディアも危機感いっぱいだ。中央日報の日本語版(電子版)は「似た状況で全く違う結果を出した韓国と日本」と題した記事で、「同じ日に同じヤマ場を迎えた両国の運命は試合一つで大きく変わった。日本はすでに本大会行き確定で余裕を持って最終戦に臨む一方、韓国は最終戦に背水の陣を敷いて総力を尽くす状況に直面することになった」と記した。

また、朝鮮日報の日本語版(同)は「ふがいない韓国代表にサポーター激怒」との記事で、「『鋭い試合運びを見せた日本が本当にうらやましかった』『終盤、ウズベキスタンまで巻き込み、場合によって出場できるかどうか計算しなければならない韓国の身の上が情けない』」といった韓国のネットユーザーの声を紹介した。

そもそも、韓国とイランはアジアのサッカー界では、犬猿の仲として知られる。前回2014年W杯ブラジル大会のアジア最終予選でも対戦した両国は、ピッチ内外で互いをののしり合う泥仕合を演じ、ともにアジア・サッカー連盟(AFC)や国際サッカー連盟(FIFA)に提訴する事態にまで発展した。

犬猿の仲のイランにまたしても

今回も中央日報が「地獄・血の涙・復讐…足より言葉で戦う韓国−イラン」と題した記事を掲載するなど、試合前からヒートアップ。イランのカルロス・ケイロス監督が韓国側から提供された練習場の芝の状態に不満を漏らしたことなどが、取り上げられた。

また、試合会場の電光掲示板には「上岩(サンアム=競技場の愛称)の炎の地獄にようこそ」と、まるでイランを挑発するような言葉が表示された。こうした“遺恨”の中で行われた一戦で、イランは後半開始早々に退場者を出し、韓国は数的有利な状況となったが、最後までイランゴールを割ることはできなかった。

朝鮮日報によると、試合後の会見でイランのケイロス監督は「韓国サポーターの皆さん、おめでとう」などと皮肉にも聞こえる言葉を繰り返したという。中央日報は「1人退場も揺れないイラン…韓国も冷静になるべき」との記事で、「いま本当に精神力が必要な時だ。意欲だけで飛びかかる内容の薄い精神力でなく、最後まで冷静に集中する精神力のことだ。ケイロス監督が率いるイラン代表の選手たちがソウルで見せたようなものだ」とまるで手のひらをかえしたように、イランの戦いぶりをたたえた。

既にW杯出場を決めているイランにとっては、シリア戦の勝敗はまったく関係ない。だが、韓国にとっては大きな問題だ。イランがシリアに敗れさえしなければ、自身の勝敗に関係なく、W杯出場の可能性が残るからだ。韓国はこれまで行ってきたイランへの仕打ちの数々を後悔してはいないだろうか。

http://www.sankei.com/west/news/170903/wst1709030014-n1.html

http://www.sankei.com/images/news/170903/wst1709030014-p1.jpg
またも荒れた韓国−イラン戦。レッドカードも出た(AP)