SF小説(しょうせつ)にみつけた歴史(れきし)

戦争(せんそう)をテーマにしたSF短編小説(たんぺんしょうせつ)「ジ・インディファレンス・エンジン」。主人公(しゅじんこう)は、子(こ)ども兵士(へいし)として、大人(おとな)の上官(じょうかん)に言(い)われるまま、同(おな)じ国(くに)に住(す)む他(た)の民族(みんぞく)を虐殺(ぎゃくさつ)してきた。戦争(せんそう)が終(お)わった後(あと)、教(おし)えられてきた歴史(れきし)がウソだったことを知(し)る。元上官(もとじょうかん)は告(つ)げる。

「歴史(れきし)があるから戦争(せんそう)が起(お)こるんじゃないぞ。戦争(せんそう)を起(お)こすために歴史(れきし)が必要(ひつよう)なんだ。奴(やつ)らと俺(おれ)たちは違(ちが)っていて、奴(やつ)らと戦(たたか)わなきゃいかんだけの理由(りゆう)をひねり出(だ)すためにな」(作者(さくしゃ)・伊藤計劃(いとうけいかく)、1974〜2009年(ねん))

もちろんSFの世界(せかい)の中(なか)の話(はなし)だ。

名前(なまえ)は「千田是也(せんだこれや)」

伊藤圀夫(いとうくにお)さん(1904〜94年(ねん))は、大学生(だいがくせい)のとき関東大震災(かんとうだいしんさい)にあった。東京(とうきょう)の千駄(せんだ)ケ(が)谷(や)で、日本人(にっぽんじん)の集団(しゅうだん)に朝鮮人(ちょうせんじん)に間違(まちが)えられて殺(ころ)されそうになった。その後(ご)、伊藤(いとう)さんは演劇(えんげき)の道(みち)を進(すす)むために芸名(げいめい)を考(かんが)えた。「千駄(せんだ)ケ(が)谷(や)でコリアンと間違(まちが)われたから、千田是也(せんだこれや)」。日本(にっぽん)を代表(だいひょう)する演劇家(えんげきか)「千田是也(せんだこれや)」誕生(たんじょう)の有名(ゆうめい)なエピソードだ。

千田(せんだ)さんが亡(な)くなった今(いま)も、優(すぐ)れた若手演出家(わかてえんしゅつか)を表彰(ひょうしょう)する「千田是也賞(せんだこれやしょう)」が続(つづ)いている。

現実(げんじつ)の世界(せかい)では、「千田是也(せんだこれや)」の名前(なまえ)を通(とお)して歴史(れきし)は未来(みらい)につながっている。