【ソウル=名村隆寛】北朝鮮による6回目の核実験(3日)を受け、韓国では「核には核で対抗」という核武装論が繰り返し論じられているが、「国民が北朝鮮の核兵器の人質になってしまう」(朝鮮日報)という現状を打開する具体的な動きには至っていない。

調査会社、韓国ギャラップの調査(5〜7日、1004人対象)によると、韓国の核保有に賛成する意見は60%で、反対は35%だった。その一方、米国による対北先制攻撃には59%が反対で、賛成は33%にとどまった。また、北朝鮮が戦争を仕掛ける可能性は58%が「ない」とし、「ある」(37%)を上回った。

韓国各メディアの調査でも、「核保有」の支持は6割以上にほぼ定着している。半面で、市民の間では戦争忌避論が根強い。北朝鮮の核実験以降、保守系各紙が、北朝鮮の核兵器保有は「現実的に時間の問題」との見方を示している。

「核武力に対する手段もない韓国は、北の核植民地になったと自ら反省しても、どうにもできない状況だ」(中央日報)との悲観論は珍しくない。「新たな制裁により北を直ちに屈服させられる保証はどこにもない」(朝鮮日報)と、対北制裁での問題解決には限界があるとの見方もある。

こうした中で高まる核武装論は、「北の人質」になってしまわぬよう、戦争を防ぐ「抑止力」として核を持つべきだとの主張だ。だが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は核保有に反対の立場を示している。「朝鮮半島非核化の原則に変わりはない」=林聖男(イム・ソンナム)外務第1次官ら=というのが政府の見解だ。

ただ、韓国ギャラップの調査では、左派系与党「共に民主党」の支持層の間でさえ、核保有賛成(52%)が反対(43%)を上回っている。「『われわれも自衛権のレベルで核武装宣言をすべきだ』という主張が出てくるのは自然」(中央日報)な状況にある。

ただし、「核には核で」との意見が多い韓国ではあるが、独自の核開発が国際社会で物議を醸すことは必至で、その時間的余裕もない。結局は米国の核の傘、つまり米軍の戦術核再配備が最も現実的で、世論はそれに期待している向きもある。

韓国メディアは、東西冷戦期にソ連の中距離核SS20に対抗し、西ドイツが導入に動いた米国の中距離核パーシングIIの配備を例に、「西ドイツは統一を成し遂げた。戦術核があっても平和統一が可能なことを歴史が示している」(中央日報)と自信を示す。

旧西独と同一視するところが韓国メディアらしいが、冷戦期の東欧と金正恩(キム・ジョンウン)政権の北朝鮮を並列するのは乱暴だ。ただ、こうした議論を繰り返すしかないのが韓国の実情でもある。

http://www.sankei.com/world/news/170908/wor1709080053-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170908/wor1709080053-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170908/wor1709080053-n3.html