朝鮮学校無償化訴訟
文科相の裁量焦点 東京地裁13日

毎日新聞2017年9月9日 14時16分(最終更新 9月9日 18時58分)

朝鮮学校を高校無償化の対象外とした不指定処分を巡る各地の訴訟
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 朝鮮学校を高校無償化の対象に指定しなかったのは違法として、東京朝鮮中高級学校(東京都北区)の元生徒62人が国を相手に1人10万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、東京地裁(田中一彦裁判長)で言い渡される。同種の訴訟は全国5地裁(支部含む)に提起され、7月に広島地裁で国が勝訴した一方、大阪地裁で国が敗訴した。司法判断が分かれる中、3件目となる判決の行方が注目される。【近松仁太郎】

 高校授業料の無償化制度は、2010年4月に当時の民主党政権が導入。国が高校に就学支援金を給付し、生徒の授業料に充てる仕組みとなっている。国内の外国人学校でも文部科学相が対象として指定すれば給付されるため、各地の朝鮮学校も指定を求めていた。

 しかし、同年11月に北朝鮮が韓国を砲撃する事件が起きると、当時の政府は朝鮮学校を無償化の対象とするかどうかの審査をストップ。自公政権に交代した後の13年2月、下村博文文科相(当時)が東京朝鮮中高級学校など10校の朝鮮学校について不指定とする処分を出した。

 このため、各地の朝鮮学校を運営する学校法人や生徒らが、不指定処分の取り消しのほか、精神的苦痛を理由とする国家賠償などを求めて広島、大阪、東京、名古屋の4地裁と福岡地裁小倉支部に提訴。最初の判決が7月19日に広島地裁で、二つ目の判決が同28日に大阪地裁で出た。

 広島判決は「文科相の判断は裁量の範囲を逸脱していない」と指摘し、不指定処分は違法ではないと判断。逆に、大阪判決は「教育の機会均等と無関係な外交・政治的理由で朝鮮学校を排除しており、(処分は)違法・無効だ」とした。

 東京地裁では広島や大阪の訴訟で実施されなかった文科省担当者の証人尋問なども行われ、不指定に至った経緯が確認された。13日の判決がこうした審理も踏まえ、文科相の裁量の範囲や判断についてどう言及するのかが焦点となる。

 国内には拉致問題など北朝鮮の状況から「不指定はやむを得ない」との声もある。だが、朝鮮学校OBの原告(21)は「不指定処分は差別的で、今も後輩たちが苦しんでいる。当たり前の権利を認めてほしい」と訴える。

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