■戦前朝鮮人労働者から搾取していた資本家一族の出身である麻生氏の発言から受ける「ジェノサイドの恐怖」

植民地時代に労働力として朝鮮半島から強制的に連れてこられ、あるいは植民地政策で土地を奪われた末に仕事を求めて日本にやってきた人々の子孫も大勢いる。

戦前、劣悪な労働環境で朝鮮人による労働争議も起きた、福岡の地方財閥系鉱業会社一族の出身である麻生副総理の発言に、「不快」を通り越して「ジェノサイドの恐怖」を感じる人々が、きっと大勢いることだろう。

さらに言えば、「朝鮮半島有事の際に難民が日本に押し寄せる」というケースは、アジア・太平洋戦争終結時にソ連軍の侵攻を逃れて旧満州・朝鮮半島北部から多くの日本人が命がけで逃げ帰ってきた、まさにその歴史にも重なっている。満州・朝鮮からの帰還民とは、文字通りの「国内難民」であった。麻生氏はその人生の中で、そうした先人たちの苦難の歴史に政治家として思いをはせることはなかったのだろうか。

■官邸内記者会見から締め出されるフリーランス、追及しない記者クラブ

こういったことを安倍総理、麻生副総理、河野外相らに厳しく問いただしたメディアはどれくらいあっただろうか。この記事を書いている9月29日夜現在、主だったニュースを見てもそういった内容は伝わってこない。

安倍総理の会見には、IWJでは、「フリーランスジャーナリスト」としての岩上安身しか参加できない。メディアとしてのIWJの参加は認められていないからだ。しかも岩上が参加したところで、第二次安倍政権後、記者クラブに所属していない記者は絶対に指名されることがない。

9月26日(火)、麻生副総理兼財務相と河野外相の会見が両方とも官邸内で行われた。残念なことだが、会見が官邸内や院内で行われた場合、IWJ記者は参加できない。そしてその官邸内の会見では、報じられている限り、麻生氏の「難民銃殺発言」について問いただしている質疑はなかった。

大臣定例会見は基本的に毎週火曜、金曜に行われる。9月29日(金)にも麻生副総理兼財務相、河野外相の会見が行われたが、またしても官邸内での開催になってしまい、IWJの参加はかなわなかった。

それでもあきらめず、IWJは記者会見の機会があれば質問に行こうとチャンスをうかがっている。大手メディアが大事なことを伝えないのなら、独立メディアである私たちが問いただし、伝えるしかないからだ。

終わり