うんざりすることばかりだ。韓国内で、慰安婦問題に固執し、反日感情を煽あおる動きが続く。文在寅大統領が掲げる「未来志向」の日韓関係の構築は到底、おぼつかないだろう。

 ソウル市鍾路区が、区内の日本大使館前の慰安婦を象徴する少女像を「公共造形物」に指定した。少女像は、民間団体が2011年に道路を管理する当局の許可を得ずに設置したものだ。

 指定により、日本側が求める撤去を実現するためには、区委員会の審議が必要となった。移転は一層困難になったと言えよう。菅官房長官が「(像の)固定化につながりかねない」と不快感を示したのは当然である。

 韓国政府が、指定の動きを放置してきたのは、極めて問題だ。慰安婦問題に関して、15年末に朴槿恵政権と日本政府がまとめた合意の経緯や内容を検証した上で、対日政策を決めるという。

 慰安婦問題を外交的に決着させた日韓合意は、両国関係の基盤である。「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。大使館前の少女像撤去に、韓国政府が「努力する」ことも約束された。再交渉の余地がないのも明らかだ。

 韓国政府には、反日世論に迎合する鍾路区の指定を戒める毅然きぜんとした対応が求められる。

 合意に基づき、韓国政府が設立した財団に、日本政府が10億円を拠出した。約7割の元慰安婦には、財団から現金が支給された。文政権は、こうした事実を国民に周知させねばならない。

 韓国の女性家族省は、忠清南道の国立墓地に、慰安婦の追悼碑を建てる計画も発表している。年内に完成し、来年6月に除幕式を行う予定だ。政府主導による碑の建立は、これが初めてとなる。

 8月14日を慰安婦記念日とする立法作業も進む。

 慰安婦関連事業について、鄭鉉栢女性家族相は「多様な歴史記録を基盤にした教育を通じて、女性の人権に対する正しい歴史認識を打ち立てる」と強調した。

 慰安婦問題を折に触れて蒸し返す。それは、韓国の若い世代の心に、日本への憎悪を定着させることにつながりかねない。

 一連の事業が実施されれば、日本国民の対韓感情がより悪化する事態は避けられまい。

 北朝鮮の軍事的脅威が増大する中、最も重要なのは、日韓両国が外交、安全保障分野で足並みをそろえることである。歴史問題での韓国の独善的な姿勢が、その妨げになってはならない。

2017年10月05日 06時31分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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