衆院選(10日公示、22日投開票)をめぐる状況は、日々、猫の目のように変化している。当初、野党や多くのメディアは「大義がない」と騒ぎたてた。ところが、小池百合子都知事が、自ら代表として国政政党「希望の党」を立ち上げると、大義の話は消え、野党再編が本格化した。

野党第1党である民進党は、希望の党との合流にすべてを賭け、事実上解党した。「しがらみのない政治」を目指すはずの希望の党に、「しがらみの塊」が合流した印象だった。

小池氏は、政策が一致しない民進党の面々は「排除する」と宣言した。民進党は党勢拡大だけを考えて「来るもの拒まず」だった結果、重要政策を何も決定できず、有能な人材まで「反対のための反対」ばかり行う烏合(うごう)の衆に落ちぶれていた。

小池氏のシビアな対応は評価したい。

「寛容な改革保守政党」を自称する希望の党は、憲法改正や安全保障関連法への支持などを入党条件に掲げた。「保守」とは対極と思われる枝野幸男元官房長官も「寛容」や「改革」の言葉にひかれたのか、当初は民進党の合流に賛同していたと聞く。

この淡い希望が消えると、枝野氏は2日に新党「立憲民主党」を立ち上げた。菅直人元首相や辻元清美前衆院議員らが合流するという。「ガラパゴス左派」と揶揄(やゆ)される人々が一致団結し、政界の構造が分かりやすくなった。

希望の党は3日、第1次公認候補192人を発表した。約6割の110人が民進党出身者だった。個別に見ると「保守」どころか「極左」と呼びたい人物もいた。公認審査が甘いことはよく分かった。

そもそも、全党を上げて安保法案に反対し、施行後も「違憲だ」「破棄を求める」と主張したのが民進党だ。選挙のために変節したとしても、多少の締め付けで裏切りを止めるのは困難だ。有権者は候補者をよく見て投票してほしい。

私が不思議なのは、もし自民党が大敗し、責任を取って安倍晋三首相が辞任したら、日本がどれほど大きな国益と信用を失うのか、想像すらしていない人が多いことだ。

安倍首相は、ドナルド・トランプ米大統領と深い信頼関係で結ばれている。ロシアのプーチン大統領や、インドのモディ首相とも非常に良好な関係である。もし、安倍首相を辞任させたら、他国は「日本人は頭が悪い」と考えるのは確実だ。

仮に、小池氏や、民進党の前原誠司代表、石破茂元防衛相の潜在能力が驚異的に高かったとしても、現在の安倍首相と同じレベルに達するのに何年かかるだろう。北朝鮮の弾道ミサイルが領土上空を飛び交う昨今の日本に、「先物買い」をしている余裕などない。

■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

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安倍首相(左)と、トランプ大統領の信頼関係は深い(共同)