韓国は旧暦8月15日の「秋夕(チュソク)」(10月4日)前後の3公休日に土日などを加え、9日まで史上最大の10連休だった。

 その結果、海外に出かけた人も史上最大で、なかでも日本旅行が大人気。昨年500万人突破の日本訪問者は今年は一挙に700万人に達する勢いだ。この時期、仕事で日本を往来せざるをえなかった筆者も航空便チケットの購入にえらく苦労した。

 日本人は北朝鮮のミサイル問題などもあって韓国から足が遠ざかっているが、韓国人の方は逆に今、ちょっとした日本ブームなのだ。

 日本語学習ブーム(復活?)もある。ソウルの老舗の日本語学院の院長によると、この夏、学院での日本語受講生は前年比50%増だったという。背景には「日本での就職」人気がある。今、韓国では求職中の若者の間で「日本に行けば就職できる」との情報が広がっていて、そのためには「まず日本語を学ばなくちゃ!」というわけだ。

 韓国では若者の就職難がよく言われているが、実態は職のより好みが強くて「学歴や能力に見合ったいい職が見つからない」というぜいたくな面が結構ある。その結果、大卒・大学院修了でIT(情報技術)に強くて英語上手など“高級人材”が遊んでいるのだ。

 だから今年スタートした文在寅政権は若者の「雇用創出」を最大公約に掲げており、加えて「よい働き口の増大」を企業に訴えている。

そんななかで日本からは、求人難や大卒・高卒の好調な就職状況などがニュースとして、これ見よがしに報道されている。そして日本企業の韓国人採用の例が話題モノとしてよく紹介されている。韓国の現状に不満の若者の間では「日本はうらやましい国」になっているのだ。

 日本での人手不足や若者の好調な就職状況は、韓国では「アベノミクスのおかげ」とされている。安倍晋三政権に対しては、憲法改正への意欲や歴史認識が気に食わないと、マスコミを先頭に非難ばかりしてきた韓国だが、皮肉にも今やそのアベノミクスの日本をうらやましがっているのだ。

 「安倍嫌い」だった韓国のマスコミは、先の都議会選挙で「小池新党」が自民党に圧勝したときは「安倍ショック、今後に暗雲!」などと大々的に伝え大喜びしていたが、今度の総選挙では意外におとなしい。理由は、その後、小池百合子都知事について「安倍より右寄り」とか「極右」などというレッテルを貼って露骨に失望し、総選挙も安倍自民党と小池新党の戦いが話題ということで、とたんに関心を無くしたようなのだ。

 韓国のマスコミは日本の気に食わない保守的状況にはすぐ「極右」という。産経新聞や筆者もそういわれ、民主党政権時代の野田佳彦首相さえ「極右」と罵倒された。安倍首相についてはいわずもがなだが、そうしたレッテルを貼って現実の日本を拒否ばかりしているうちに、アベノミクスは、いささか大げさにいえば韓国の若者にまで希望とチャンスを与え、日本の存在感は広がった。総選挙の結果を韓国がどうとらえるか楽しみである。(ソウル駐在客員論説委員)


2017.10.15 13:00
http://www.sankei.com/world/news/171015/wor1710150019-n1.html

https://i.imgur.com/uT7M80u.jpg
求職中の若者の間で「日本に行けば就職できる」との情報が広がっている =ソウル市内の繁華街(森田達也撮影)