北朝鮮から弾道ミサイルが発射されたとき、政府から発信されたJアラート(全国瞬時警報システム)によって、体調を崩した人が少なくなかった。Jアラートがきっかけで不安症状を起こした患者を診察した諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、どのように過ごして平穏を保つのかについて解説する。

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8月29日、諏訪中央病院の外来に80歳の女性がやってきた。「胸がドキドキして、身の置きどころがない」という。不安症状だ。血圧を測定すると、正常値をはるかに超えた高血圧だった。

その日の早朝、北朝鮮から弾道ミサイルが発射された。政府はJアラート(全国瞬時警報システム)を発動し、ぼくの住む長野県を含む東北、北海道など12道県に、ミサイル発射警報を発令した。

「頑丈な建物や地下への避難」を呼び掛ける防災無線やテレビのただならぬ空気に、80歳の女性は過敏に反応。血圧が急上昇した。いうなれば「Jアラート高血圧」だ。警報が発令された地域では、きっと同じような症状を訴える人が増えたのではないか。そもそもJアラートで、ミサイル発射警報を出すことの意味は何なのだろうか。

北朝鮮から弾道ミサイルが発射されたのは、午前5時58分。政府がJアラートを発動したのは6時2分。その4分後にミサイルは北海道上空を通過した。たった4分間で、どうしろというのか。

しかも、12道県中9道県24市町村で機器のトラブルが起きた。100億円以上かけて整備されたが、危機管理の運用上の課題を残している。

ミサイル攻撃を想定した避難訓練も、全国約10の自治体で実施されている。ブロック塀の陰に隠れたり、頭をかばってうずくまったりする避難訓練の光景を、英国BBCはおもしろおかしく報じた。

少しでも被害を少なくするために大事な行動という専門家もいるが、どうしてもバケツで消火訓練か、竹やり訓練のことを連想してしまう。こんなことより、政治はもっとやるべきことをやってほしい。

今後、北朝鮮がミサイルを撃ち続けるたびに、不穏なサイレンが鳴り響くとしたら、ぼくたちにどんな影響があるだろうか。健康を害さないまでも、いつの間にか不安が蓄積し、恐怖や怒りに変わっていくのが心配だ。そうした恐怖や怒りの「空気」は、何かのきっかけに、激しい塊となって制御できなくなってしまう。日本人は「空気」に弱い。

今、北朝鮮は、「金組」を守ろうと必死である。これまで世界は北朝鮮に圧力をかけ続けたが、うまくいっていない。経済制裁も、抜け道が多すぎる。

9月11日に全会一致で採択された北朝鮮への制裁決議も、やはり腰砕けだった。「原油の禁輸」「ガソリンの禁輸」「天然ガスの禁輸」「北朝鮮労働者の雇用の全面禁止」などこれまでにない厳しい内容になると予想されていたが、結局、石油やガソリンなどの輸入に上限を設けたものの、原油に関しては現状維持。強硬なアメリカが中国やロシアに譲歩した形となった。

国際社会が北朝鮮へ警告を発することには成功したと見る向きが多いが、バカじゃないか。もう警告は何年も発し続けている。

「金組」の組長が「オレは強い」「オレはカダフィやフセインのようにはつぶされないぞ」とヤンチャをしているだけ。不良少年がオレの話を聞いてくれと叫んでいるのだ。

外交は、圧力ばかりでは成り立たない。同時に、対話が求められる。何をしでかすかわからない相手ほど、パイプを通しておくことが必要だ。

15年前、小泉元首相が北朝鮮を突然訪問したが、その準備は1年前から田中均アジア大洋州局長(当時)が水面下でパイプをつくっていた。こういうテーブルの下の話し合いが大事なのだ。

今後さらに北朝鮮への制裁が厳しくなっていけば、金組長はミサイルや原爆をイスラム過激派集団に売るだろう。こうなったら収拾がつかなくなるが、金組を倒すのはアメリカではない。この国の国民だ。20年はかかるだろうが、時間をかけて国民の洗脳を解き、人権の守られる平和な国に変わっていくのを待つしかない。

そんななか、参議院議員のアントニオ猪木氏が32回目の訪朝をした。菅官房長官に「全ての国民に北朝鮮への渡航の自粛を要請している。

https://news.nifty.com/article/item/neta/12180-618320/

>>2以降に続く)