希望の党が小池百合子代表の「排除」発言で失速し、選挙直前に枝野幸男氏が結党した立憲民主党が大躍進し、野党第一党となった。安保法制の反対デモなどでかつて共闘した元SEALDs諏訪原健さんが分析する躍進の舞台裏とは?

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総選挙では自・公が定数の2/3を超える議席を獲得し、「安倍一強」は今後も続いていくことになった。しかしそんな状況の中で、ひときわ注目を集めているのが、立憲民主党の大躍進である。立憲民主党の議席数は、公示前の15から、55へと大幅に伸び、一気に野党第一党の地位に登りつめた。

このような大躍進の原因を、希望の党の失速に伴って偶然に生じた「風」と見る向きもある。しかし私にはそうは思えない。あえて言えば、「風」に流されまいとする「草の根」の動きこそが、結果的に「風」を作り出すことになっているのだと思う。

その「草の根」の動きを促進したのが、立憲民主党の「ボトムアップ」というスタンスだ。枝野氏は、「立憲民主党は『あなた』が作った政党だ」と街頭で語っていた。事実、立憲民主党が立ち上がったのは、「枝野立て」という市民の後押しがあったからだ。

市民の声を受け、枝野氏はたった一人で記者会見を開き、ともに戦ってくれる人を募った。それを見て、自分こそがこの動きを作り出した当事者なのだ、何としても選挙戦に参加しなければならないと思った人が多くいたはずだ。

枝野氏の言葉を聞いていて、真っ先に思い浮かんだのが、バーニー・サンダースのホームページ(HP)に書かれた言葉“This is your movement”だった。候補者のためではなく、あなた自身のための選挙なのだという打ち出し方に重なるものを覚えた。

また立憲民主党の選挙戦自体も市民主体の選挙で、どこかアメリカ大統領選を彷彿させるものがあった。

選挙戦の中で特に印象的だったのはSNS戦略だ。立憲民主党のTwitterアカウントは、政党の「広報」にとどまらない、どこか「中の人」を身近に感じるような発信で多くの共感を集めた。フォロワーも選挙期間中に18万人にまで膨れ上がり、フォロワーの急激な増加自体がニュースになっていた。

SNSは選挙への参加を呼びかけるツールとしてもよく機能していた。街頭演説会の告知においては、「#大阪最終大作戦1020」、「#東京大作戦FINAL」のように毎回ハッシュタグが作られ、Twitterユーザーがつながりやすくなる工夫が見られた。また「ボランティア大作戦」と題して、選挙への参加方法が様々な形で提示されていた。

さらにSNSの利用方法は、一方的な情報発信にとどまらなかった。Twitter上で会話をする光景も多く見られたし、市民の自発的な動きも積極的に拡散することもあった。また演説会の参加者が自分で撮った写真や動画を、「#立憲カメラ」というハッシュタグでアップロードするように呼びかけるなど、市民の側からの情報発信も後押ししていた。

こういった取り組みは、SNSを超えた勢いにつながった。街頭演説会には、毎回多くの人が参加し、その様子はメディアを通じて、さらに広い層に届けられた。しかも伝えられる演説会の様子は、安倍自民党総裁の、ものものしい警備に囲まれ、聴衆と離れた街宣車の上から行われる演説とは一線を画していた。

選挙ボランティアの促進にもSNSが貢献していた。初めて候補者の事務所に足を運んでボランティアをした人、初めて家の前に政党のポスターを貼った人、そういう人が多く見られた。また立憲民主党への寄付も、短期間で8,500万円にまで膨れ上がった。このような様々な要素が連鎖的に作用し合うことで、「風」は作り出されていたと言える。

さらに言えば、55議席を獲得するまでにいたったのは、安保法制以来の「市民と野党の共闘」の下積みがあってのことだ。共産党は「見返りは民主主義」だとして、異例とも言えるスピードで67選挙区の候補者を取り下げた。

取り下げを行えば、選挙区内での選挙運動は著しく制限され、自らの議席数に大きな影響が出ることは目に見えている。それでも「市民と野党の共闘」を重んじるという踏み込んだ決断だった。各地の市民グループも、地域事情に合わせて、迅速に最適な戦い方を作り出していた。

https://dot.asahi.com/dot/2017102400068.html

>>2以降に続く)