衆院選は憲法改正にどう向き合うかも争点の一つだった。憲法改正を党是とする自民党(総裁・安倍晋三首相)と、「加憲」の立場をとる公明党の与党が改憲の国会発議が可能となる3分の2(310議席)を超える313議席を確保し、希望の党や日本維新の会などを加えたいわゆる「改憲勢力」が約8割を占めた。

そうした情勢下にあって、衆院選期間中、憲法改正に関する記事を最も多く掲載したのは「護憲派」として知られる朝日新聞だった。



朝日の11〜22日付の衆院選関連記事のうち、憲法改正にかかわる文字を見出しに含んだ記事は計1459行で、面積は新聞約2・9ページ分に相当する。

朝日が公示翌日の11日付朝刊の1面に掲載した記事の見出しは「憲法、増税、原発、森友・加計」で、最初に憲法を配した。12日付から始まった連載企画「安倍政治 その先 2017衆院選」でも、改憲論を初回のテーマに据えた。

投開票日の22日付でも「自民は公約集の柱に憲法改正を掲げ、首相が提案した9条への自衛隊の明記など、4つの改憲項目を列挙する」などと憲法9条に焦点を当てて、与野党の主張を紹介している。

調査対象とした12日間のうち、朝日が憲法改正に関する記事を掲載しなかったのは2日間だけ。掲載量、掲載日数とも最多だった。

もっとも、記事が多いからといって朝日が憲法改正に積極的なわけでも、理解を示したわけでもない。むしろ、改憲が現実の政治課題となってきたことへの危機感の表れといえる。

13日付の連載企画は、導入部分で、安倍首相が憲法改正を公約に掲げたことについて「憲法改正ありき」と決め付け、白抜き見出しで「改憲が自己目的化」とした。

記事本文では「なぜいま憲法改正なのか、根拠が明確ではない」と断じ、安倍首相が提起した憲法への「自衛隊の明記」を取り上げ「政府自身、自衛隊を『合憲』と説明し、国民にも広く受け入れられてきた。憲法を変える必然性はない」と主張した。

記事は続けて「にもかかわらず、こうした提案がされるのはなぜか」と問いかけ、「憲法は変えたい。しかし、本格的な熟議にさらす自信がないのでは」と推測する学者のコメントも紹介するなど、改憲に否定的な意見をちりばめた。

また、朝日は20日付社会面で「九条の会」などが国会前で行った憲法改正に反対する集会を取り上げ、「今回の選挙は憲法を改悪するのか、それを阻止するかの戦い」と訴える日本体育大教授のコメントを掲載した。

記事は「守れ、生かせ 憲法」と書かれたプラカードを持って参加する人々の写真付きだ。他紙はこの集会を報じていなかった。

朝日に次いで憲法改正に関する報道に多くの紙面を割いたのは改憲に慎重な立場をとる毎日新聞で、12日間の合計は1027行。紙面2・5ページ分に相当する。

一方、これまで3度にわたって憲法改正試案を発表している読売新聞は、記事面積でみると朝日の4分の1以下だった。

新憲法案の「国民の憲法」を発表している産経新聞は、他紙の社説にあたる「主張」で憲法改正を取り上げ、特別面でも憲法をめぐる各党の主張を伝えたものの、選挙関連記事としては主要5紙の中で最も少なかった。

憲法改正をめぐり、安倍首相は今年5月、具体的な検討項目として自衛隊の明記や教育無償化を打ち出し、新憲法の2020年施行というタイムスケジュールにも言及した。しかし、最近は「一石を投じる意味であえて触れたが、スケジュールありきではない」と繰り返し、国会論議を見守る姿勢をとっている。

直面する課題として北朝鮮危機が浮上したこともあり、衆院選の街頭演説で安倍首相が憲法改正を訴える機会はほとんどなかった。このため、改憲をめぐる論戦が低調であることを伝えた記事が、各紙に共通してみられた。

産経は20日付社会面で「『憲法論議もっと聞きたい』」「改憲派候補増加も 街頭で訴え少なく」の見出しを立て、朝日も17日付社会面で「改憲 振るわぬ論戦」と報じた。

http://www.sankei.com/politics/news/171028/plt1710280012-n1.html

>>2以降に続く)