【ソウル=名村隆寛】トランプ米大統領の訪韓を来月7日に控え、韓国が慌ただしい。10月28日にソウルで開かれた米韓定例安保協議(SCM)では、北朝鮮に対する防衛協力の方針を確認したばかり。一方で、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の首席代表を中国に派遣し、問題の平和的解決に向け話し合うという。

 マティス米国防長官と宋永武(ソン・ヨンム)国防相が出席したSCMで韓国側が注目したのは、有事作戦統制権(指揮権)を米軍主導の米韓連合軍から韓国軍に移管する計画だった。移管される場合、米韓連合軍司令部に代わり「未来連合軍司令部」が創設される。また、有事に米軍が司令官を、韓国軍が副司令官を務める現行の体制は、米韓が逆になる。

 今回この案の承認は保留となった。来年のSCMまでに「発展させることで合意」(共同声明)するにとどまった。作戦統制権の移管は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時、2012年4月で米韓が合意したが、李明博(イ・ミョンバク)政権で15年12月に延期、朴槿恵(パク・クネ)政権では無期限の再延期となった。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は任期中(22年まで)の早期移管を目指している。韓国では「次回SCMの来年10月までに計画が作成されれば、早期移管に向けた案が本格的に推進されるとみられる」(ハンギョレ紙)と楽観的な展望が少なくない。ただ、状況がそれを許さない。北朝鮮の核・ミサイルの脅威が過去最高の水準となる中、韓国軍に任せるのは時期尚早という意見もあり、米国側を中心に移管への慎重論は根強い。

米韓首脳会談を前に米国は、韓国に現実を悟らせた面もうかがえる。そんな中、韓国外務省は10月30日、6カ国協議の首席代表、李度勲(イ・ドフン)朝鮮半島平和交渉本部長が同31日に北京で中国の首席代表の孔鉉佑外務次官補と会談することを発表した。

 中国共産党大会が終了し、2期目の習近平体制が発足した“絶妙のタイミング”で、韓国は中国と平和的解決に向けた意見交換を試みる構えだ。一方では、トランプ大統領の訪韓、訪中も控えた微妙な時期でもある。米中の間で落ち着けない感じも否めない。


2017.11.1
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/171101/soc1711010017-n1.html