【ソウル=桜井紀雄】朝鮮半島の南北軍事境界線がある板門店で北朝鮮兵士が韓国側に越境し、銃撃された事件で、韓国軍が亡命兵士を一時、見失っていたことが分かった。北朝鮮側は休戦協定に違反し、自動小銃を使用。韓国側の対応の遅れや応射しなかったことが議論を呼んでいる。

 韓国軍が、北朝鮮側施設付近で軍人3人が素早く移動するのを察知したのは13日午後3時14分ごろ。直後に銃撃が起き、16分後に韓国側で倒れていた兵士を発見した。救助までには事件発生から約40分が経過していた。韓国軍関係者は、亡命兵士が北朝鮮側で車を降りた場所は「木で隠れていた上、銃声で北の軍の動きを追っていて兵士の動きは把握できなかった」と釈明した。

 国会で14日、「南北共同警備区域(JSA)で北の銃弾が韓国側に越えてきた初の事件ではないか」との野党議員の質問に、宋永武国防相が「その通りだ」と答えたことも波紋を呼んだ。宋氏が報告を受けたのは事件から1時間以上後。軍幹部は「韓国側で着弾の跡は確認されていない」と宋氏と異なる説明をした。

 北朝鮮側はJSAで携帯を禁じられている自動小銃AK47などで約40発発砲。これに対し、韓国側が応射しなかった対応を疑問視する声も上がるが、韓国軍関係者は「味方に危害が及ぶといった状況ではなかった」との認識を示した。亡命兵士は15日、2回目の手術を受けたが、意識不明の状態が続いているという。


2017.11.15 19:32
http://www.sankei.com/world/news/171115/wor1711150027-n1.html

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13日、ソウル郊外の病院で手当てを受ける、板門店で亡命した北朝鮮軍人とみられる男性(聯合=共同)