http://www.sankei.com/smp/column/news/171228/clm1712280003-s1.html

 噴飯ものの結論と呼ぶしかない。慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意に対する、韓国政府の検証結果が出た。「元慰安婦の意見を十分に聴かなかった」というのだ。日本政府は合意に従い、10億円の資金を提供している。元慰安婦の7割以上が現金を受け取っている事実から、目をそむけている。

 ▼もっとも、予想通りともいえる。もともと合意をないがしろにして、慰安婦像の撤去に取り組んでこなかった国である。今年5月には、「合意見直し」を公約に掲げる文在寅氏が大統領に就任した。外相直属の作業部会の委員長を務めたのは、左派系紙ハンギョレ新聞の元論説委員室長である。

 ▼それでも大きな疑問が残る。北朝鮮による核・ミサイル危機が目の前に迫るなか、連携を強化すべき日本をなぜ、突き放すのか。評論家の室谷克実さんと小紙の加藤達也元ソウル支局長による新刊『韓国リスク』が、わかりやすく解説している。

 ▼室谷さんによれば慰安婦問題は、韓国で慰安婦像を本尊とする宗教になっている。「国教」となれば、外交上の信義もへったくれもない。本音は「北朝鮮バンザイ」である韓国の左翼にとって、日韓の分断はむしろ好都合でもあるという。

 ▼加藤記者はさらに、文在寅政権の危険な兆候を指摘する。今年10月、独島(トクト)(竹島の韓国での呼称)を防衛する部隊を創設すると言い出した。日本を「敵国」と認識していることになる。

 ▼日韓合意については、何を言ってこようと取り合わなければいい。頭が痛いのは、朝鮮半島有事の際に在韓邦人をいかに退避させるか、である。北朝鮮の砲弾が火を噴くなかでも、自衛隊の受け入れを認める可能性は限りなく小さい。それを前提に救出作戦を立てるしかない。