■シルバー民主主義?

 短期志向になりがちな政治の一つの側面を表現するのが、「シルバー民主主義」という言葉だろう。

 日本では有権者に占める高齢者の割合が高く、しかも、若い世代に比べて投票率が高い。その大きな影響力を、政治の側は気にせざるをえない。

 結果として、社会保障が高齢者優遇に傾けば、世代間の格差は広がる。長期的には財政を圧迫し、将来世代に禍根を残す。

 ところが、興味深いデータがある。亀田達也・東京大教授(実験社会科学)と同大大学院生の齋藤美松(よしまつ)さんが昨年夏、東京都文京区の有権者2千人を対象にアンケートをした。

 日本の財政赤字や地球温暖化といった「持続可能性」に関わる問題への関心は、高齢層の方が高かった。生まれていない「将来世代の代弁者」の役割を積極的に担う意欲についても、同じ傾向だった。

 老人は子どもや大学生に比べ、近視眼的な判断をしにくいという先行研究にも触れつつ、亀田教授は「今の世代と将来世代との間の公平を実現する上で、高齢者の果たしうる役割はありそうだ」と話す。

 だとすれば、政治がシルバー民主主義化するとしても、それはお年寄りのわがままというより、政治の側がいい顔をした結果にすぎない可能性がある。

 目先の利益にかまける政治、時間軸の短い政治の弊害だろうか。