■われらの子孫のため

 民意の「変化」を敏感に追う政治家に対し、政策の「継続」と一貫性にこだわる官僚。そんな役割分担は、官邸主導が進む中であやふやになった。

 民主主義の時間軸を長くする方策を新たに考えなければならない。様々なアイデアが既に出ている。

 財政再建でいえば、独立した第三者機関を置き、党派性のない客観的な専門家に財政規律を厳しくチェックさせる、といった提案がある。

 若い人の声をもっと国会に届けるため、世代別の代表を送り込める選挙制度を取り入れてみては、という意見もある。

 国政選挙が年中行事化しないよう、内閣の解散権を制限すべしという主張は、最近の憲法論議の中で高まりつつある。

 「来たるべき世代に対する」国の責任を明記するのは、ドイツの憲法に当たる基本法だ。1994年の改正で、環境保護を国家の目標として掲げた。

 こうした条項を日本国憲法は持たないが、将来への関心を欠いているわけではない。

 前文には「われらとわれらの子孫のために……自由のもたらす恵沢を確保し」とある。

 11条は「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」とうたう。

 先を見据えよ。憲法は、そう語っているように思われる。