この小説が出版された当時には、日本でもその内容が簡単に報じられ、幼稚で荒唐無稽なトンデモ反日小説が出版されたと話題になった。

内容は3部に分かれ、第1部(13ページ)と第3部(42ページ)はフィクションである。中間の第2部(約300ページ)は何かといえば、
単なる安重根の偉人伝(ノンフィクション)。

要するに、本の大半は、一般に広く知られている安重根の一代記を書き連ねたにすぎない。
作家の才覚が発揮された創作部分は全体の2割にもならない。この「作家の才覚が発揮された部分」にとんでもない内容が凝縮されている。

小説の「あとがき」で著者は次のように日本人に警告を発している。

(安重根は)平凡な人間として英雄になったことを、特に(韓国を)侵略しようとする意図をもった者どもは肝に銘じなければならない。
今日の大韓民国には彼(安重根)のように人を愛し、平和を守ろうとする、平凡であるが、義気あふれる人々が多いためである。
警告ではなく、反省の機会になることを心から願う。

著者が小説を通して訴えているのは、「目的さえ正当化できるなら、暗殺というテロも容認される」ということである
こうした自分勝手な思い込みをもって他国の指導者を暗殺する行為を正当化できるのならば、世界で頻発しているテロリストの蛮行もすべて肯定しなければならないだろう。

そもそも安重根の理念は帝国主義列強が勢力争いを繰り広げていた20世紀初頭のもの。現在の国際情勢に適用することなど、到底できないのである。
今回の首相の訪韓時に、小説に書かれているようなテロが行われる可能性は低いと見られるが、安倍首相のハリボテ人形が焼かれたり、
日章旗が焼かれたりといった、お決まりの「義挙」は大々的に行われるだろう。

安倍首相が韓国人の「脳内妄想」「印象操作」によって引き起こされる「不測の事態」に遭遇せず、無事に帰国できることを祈ってやまない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54418?page=5