◆韓国社会を揺るがす男性ヌードモデル写真流出事件
 〜警察の素早い徹底捜査と過熱報道が浮き彫りにした性差別

韓国には「Womad」という男性嫌悪を語るウエブサイトがある。
これを立ち上げた団体は、他の女性運動団体とは異なり、徹底して女性優越主義に基づいてると表明している。

2017年12月に正式なサイトが開設されて以来、これまでに何度か問題を起こしてきた。
警察の捜査も入り、運営陣が逮捕されたことなどにより、今では海外にサーバーを移している。
その「Womad」が5月2日から韓国のニュースサイトを賑わしている。

■男性のヌード写真がネットに流出

某美術大学のヌードクロッキーの授業中に撮られたと思われる男性モデルのヌード写真が、5月1日にWomadサイトに投稿された。
投稿された後、Womadの会員たちは、その写真をシェアし、男性モデルを性的に冒涜した。
美術界では、ヌードモデルの身元情報を公開したり、身体をこっそり撮影したり公開する行為を厳しく禁じている。

もし、こうした約束が守られない場合、ヌードモデルの日常生活に影響を及ぼすことはもちろん、ヌードモデルの志願者が減るという事実を元にした不文律の約束事である。
したがって、Womadに投稿された後、すぐに大学側は授業に参加した20人ほどの学生、教授などに問い質したが、誰も犯人だと名乗らなかったため、警察に捜査を依頼した。
捜査の結果、同僚モデルの女性が容疑者として浮上した。

5月12日には、「証拠隠滅や逃走の恐れがある」ということで、その女性が緊急逮捕された。
投稿した理由は、休憩時間に使う休憩空間の利用問題で被害者の男性モデルといさかいがあったとこのことだ。
これで一件落着と思われるが、実はこの事件は意外な方向へと波紋を広げていた。

■女性の被害者とは比べ物にならない対応

通常の盗撮では男性が加害者で被害者が女性の場合が多い。
盗撮、リベンジポルノ、MeToo運動などで女性が被害を訴えても、男性たちの非難などの2次被害が多かった。
さらに、MeToo運動以外は、ほとんど報道されることもなく、被害者の女性たちは泣き寝入りするのがオチだった。

それなのに、盗撮の捜査は迅速に行われ、連日被害者がどれだけ苦しんでいるのかとか、Womadに対する非難などを各メディアが報道した。
5月11日には、あるテレビ番組で被害者が心情を告白した。

それによると、性的羞恥心や侮蔑感で苦しく、対人恐怖症と被害妄想に苛まれ、社会生活、信仰生活など、すべてが中断された状態だという。
特に、自分がバイトとしてヌードモデルをしていたことは周囲の誰にも言ってなかったので、親や親戚、知人にばれるのがとても苦しいという。

だが、こうした報道に対して、Womadは、「盗撮事件でも速報が出せるのか」「盗撮を拘束捜査できるのか」「押収捜索もできるのか」「サイト管理者も処罰できるのか」など、女性被害者の時とは対応が異なることへの非難をやめない。
そして、Womadのある会員は「これまで男性たちが女性被害者に向かって『申告もせず何をしてたんだ?』とか『112(日本の110番)も知らないのか』と言っていたことは、彼らは申告をすれば本当にこのように魔法のような素早さで解決できるからだったんだ」と書き込みをしている。

■今回の事件対処は理想的

Womadは、「今回の事件の対処が悪いわけではない、かえって理想的だ」という。
そして、「被害者を保護し、2つの専担チームを作って早く逮捕すること自体はとても立派だ。しかし、だったらなぜ今までの盗撮被害者にも同じようなことをしなかったのか。彼女たちが身を隠したり、自殺する間は何をしていたのか」という。

このように1つの盗撮事件が、男女差別論争に火をつけた格好になっている。
もともと男性嫌悪を提唱してきた団体だけでなく、今回は普通の女性たちも盗撮事件においての男女差別に憤りを感じている。
5月11日、青瓦台の国民請願掲示板には、「女性も大韓民国の国民です。性別関係なく国家保護を要請します」というタイトルの請願が投稿された。

該当の請願者は、次のように性別による警察の捜査の違いを批判した。

JBpress(日本ビジネスプレス) 2018.5.16(水)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53086

※続きます