(社説)安倍1強政治の果て 民主主義の根腐れを憂う

2018年7月22日05時00分

 憲法が「国権の最高機関」と定めた言論の府の惨状も極まった。安倍1強政治のおごりがもたらした民主主義の危機は一層深まったと言わざるをえない。

 きょう閉幕する通常国会で、政権与党は働き方改革法、参院の定数を6増やす改正公職選挙法、そしてカジノ実施法を次々と強行成立させた。

 一方で、行政の公正性や政治への信頼を深く傷つけた森友・加計問題は、誰一人政治責任を取らぬまま、真相解明はたなざらしにされた。

 巨大与党を従えた長期政権の弊害が、国の統治を根腐れさせようとしている現状を、これ以上見過ごせない。

 ■説明せぬ政権の不実

 行政府を監視し、熟議を通じて、より幅広い国民の理解を得ながら法律をつくる――。そうした国会の機能をこれほど形骸化させた第一の責任は、安倍首相にある。

 昨年の通常国会から追及が続く政権をめぐる問題は、今春以降、新たな局面を迎えた。

 森友学園との国有地取引をめぐっては、財務省による決裁文書の改ざんや交渉記録の廃棄が明らかになった。首相の妻が名誉校長を務めていた学園に特別な便宜が図られたのではないかという疑惑は、国民の「知る権利」を侵し、民主主義の土台を掘り崩す事態にまで発展した。

 加計学園の獣医学部新設では、首相と加計孝太郎理事長が面会し、首相が「いいね」と言ったなどと記した愛媛県の文書が公になった。事実なら、一国の首相がこれまでウソをついていたという深刻な問題だ。

 いずれも、衆参両院の予算委員会や党首討論で再三取り上げられたが、解明にはほど遠い。正面から疑問に答えようとしない首相らの不誠実な姿勢こそが、政策論争に割くべき貴重な時間を空費させた。

https://www.asahi.com/articles/DA3S13599612.html?ref=editorial_backnumber