7/30(月) 20:49配信
産経新聞

 【北京=藤本欣也】中国の習近平国家主席の母校、清華大の教授が7月下旬、指導者への個人崇拝を厳しく批判し、国家主席の任期復活や天安門事件の再評価を要求する論文を発表、中国内外で波紋が広がっている。体制側の知識人が中国共産党指導部に“反旗”を翻すのは異例の事態だ。

 発表した清華大法学院の許章潤教授(55)は安徽省出身。西南政法大を卒業後、オーストラリアのメルボルン大に留学し法学の博士号を取得した。

 7月24日、北京の民間シンクタンクを通じてインターネット上に公開した論文で、許氏は「国民は今、国家の発展や家族の安全に対し途方に暮れている」と指摘。3月の全国人民代表大会(国会に相当)で国家主席の任期を撤廃した憲法改正などを問題視した。

 任期撤廃に関しては「改革開放(の成果)を帳消しにし、恐怖の毛沢東時代に中国を引き戻し、滑稽な、指導者への個人崇拝をもたらすものだ」と非難。任期制に復帰するよう求めた。

 特に、指導者への個人崇拝については「まるで時代遅れの強権国家のようだ」「今すぐブレーキをかけなければならない」と主張。「なぜこのような知能レベルの低いことが行われたのか、反省する必要がある」と痛烈に批判した。

 さらに1989年に大学生らの民主化運動を武力鎮圧した天安門事件に関し、「今年か(発生30年を迎える)来年の適当な時期の再評価」を要求。「これらのことは現代政治の一般常識であり、国民全ての願いだ」と党に再考を促した。

 許氏の論文について、天安門事件で失脚した趙紫陽元総書記の側近だった鮑●(ほうとう)氏は賛意を示す一方、許氏の安全を危惧している。

 現在、中国本土では許氏の論文がネットで閲覧できなくなっている。

 中国では最近、習氏への個人崇拝に対する批判が表面化している。5月にも名門、北京大で「毛沢東は個人崇拝を推し進め…人民は無数の災禍を経験した」「習氏は個人崇拝を大々的に推進している…警戒を強めるべきだ」などとする壁新聞が出現、関心を集めた。

●=杉の木へんを丹に

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180730-00000559-san-cn