https://images.wsj.net/im-39260?width=1260&;aspect_ratio=1.5
▲工場を視察する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(8月)
https://images.wsj.net/im-39253?width=1260&;aspect_ratio=1.5
▲白頭山の山頂で握手を交わす南北首脳の写真

 【ソウル】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、バスケットボールとコンピューターが好きな親しみやすい若き平和の担い手――。少なくとも、クリスマス商戦を迎えた韓国で最も話題になっている子供向けギフトの一つで描かれた姿によれば、そういうことになる。

 陽気に手を振る正恩氏の姿をアニメ風に描いた立体パズルセットは、今週に入って店頭から撤去された。正恩氏を残忍な独裁者で人権無視の犯罪者と考える韓国の保守派の人々から激しい非難を浴びたからだ。

 しかし、韓国の教育放送公社(EBS)が就学前児童や小学生向けに販売したこの玩具は、1年間にわたるハイレベルの南北交流を経て、韓国内での正恩氏のイメージがいかに急激に変化したかを物語っている。

 ちょうど1年前、正恩氏は北朝鮮史上最も強力な大陸間弾道ミサイル(ICBM)である「火星15」の発射実験を視察していた。このミサイルについて正恩氏は、米国全土を射程に収めるものだと豪語した。その数カ月か前には、異母兄である金正男氏を公共の場で使用禁止の化学兵器によって暗殺したと非難されていた。

 しかし、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領との3回の会談やドナルド・トランプ米大統領との首脳会談を経て、正恩氏の一般イメージは最近数カ月で劇的変化を遂げた。

 9月の南北首脳会談後は約1カ月にわたり、ソウル市庁舎にビル3階分に相当する巨大な垂れ幕が掲げられた。そこには、朝鮮半島最高峰で最も神聖な山とされる白頭山の山頂で握手を交わす南北首脳の写真が印刷されていた。
(中略:その他の事例)

 そうしたなか、韓国の若い政治活動家らは、来月にも実現する可能性がある正恩氏のソウル訪問を歓迎するよう市民に呼びかける街頭活動を始めている。

 この活動を中心となって行っていたソウル市民のキム・スグンさんは「金正恩氏の映像から、わたしは彼への信頼感を得た。彼は謙虚で私欲のない指導者に見える」とコメント。韓国市民の大半が正恩氏を評価しているのではないかと語った。

急激なイメチェンに限界も

 ただ、立体パズルをめぐって騒動が起きたことは、正恩氏の急激なイメチェンに限界があることを示している。

 問題となったパズルは、韓国玩具メーカーのスコラスが公共放送であるEBSの委託で製造した4種類のうちの一つ。フルセットには、北朝鮮をめぐる外交プロセスで中心的役割を担うトランプ大統領、文大統領と習主席がそれぞれ笑顔を見せるパズルが含まれており、「平和の時代をけん引する指導者たち」というタイトルが付いている。

 正恩氏のパズルは、スコラスが商品撤去と謝罪に追い込まれるまでの数週間で700個ほどが売れた。(中略)スコラスの広報担当者は立体パズルについて、韓国の子供たちに政治色なしに朝鮮半島の平和的統一の可能性について学んでもらうことを意図したしたものだと語った。

一部の韓国の若者は、スコラスおよび正恩氏の立体パズルに共感を示している。ソウルにある私立大学、光云大学に通うイ・ギブンさん(21)は、かつては正恩氏には無関心だったが、年長者である文大統領に礼儀正しく対応してるのが「誠実な人物」に見えると話した。大学の友人たちは正恩氏のソウル訪問を楽しみにしているという。

 立体パズルについては大きな問題ではなかったと考えており、「自分用に一つ買いたかった」そうだ。

ソース:ウォール・ストリート・ジャーナル<金正恩氏に抱くイメージ、韓国市民の間で劇的変化>
https://jp.wsj.com/articles/SB12063094083892523624104584623260406653546