韓国海軍の駆逐艦が石川県・能登半島沖の日本海で、海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した。レーダー照射は射撃の前提とされる。

 日本政府が「極めて危険な行為」と韓国に強く抗議したのは当然である。韓国側は、照射は意図的ではないとした上で、日本の抗議に「行き過ぎた反応」(軍当局者)と不快感を示した。

 日韓間では、韓国人元徴用工の対日賠償請求問題が最大の焦点に浮上している。今回の問題が関係をさらに冷え込ませることにならないか心配だ。

 相互不信を増幅させていては双方に益はない。遭難した北朝鮮船捜索のためだったという韓国側の主張には納得できない点も多く、まずはしっかりとした経緯の説明と再発防止を求めたい。

 日本政府は、毅然(きぜん)とした態度で事態の沈静化を図るべきだ。

 防衛省によると、レーダー照射は日本の排他的経済水域(EEZ)内で発生した。照射を受けた後、乗員の目視でもレーダーが作動していることを確認し、韓国側に無線で意図を問い合わせたが、応答はなかったという。

 照射は数分間にわたり、日本政府は韓国艦が意図的に続けたとの見方を強めている。

 レーダー照射は、実際の火器の使用に先立って実施する。海自幹部によると「撃ち落とすぞ」という意味があるといい、不測の軍事衝突を招きかねない。

 数々の懸案を抱えているとはいえ、日本と韓国は隣同士の友好国であることに変わりない。自衛隊にとっては、韓国軍は北朝鮮の核・ミサイル開発など安全保障上の共通の課題に対処する「身内」ともいえる存在だ。

 それだけに韓国側の意図を測りかねる。韓国の歴史問題対応への反発を強める安倍政権内では「関係修復は困難」との悲観論も広がっているという。

 さらに気掛かりなのは、それ以上に韓国側が日本との関係改善に無関心な態度を示している点だ。複雑な対日感情が背景にある。

 相手に強く出るほど国内世論の支持を得やすいとの思惑が双方から透ける。残念な事態だと言わざるをえない。

 事実関係に食い違いも生じており、日韓が共通認識を持って意思疎通を図る必要がある。きのうソウルで開かれた外務局長協議でも取り上げられた。今回の問題がむしろ歩み寄るきっかけになるように努力してほしい。

https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20181225000068
京都新聞 【 2018年12月25日 12時47分 】