文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今月8日、今年初の国務会議(閣議)を開催した。文大統領は「フェイクニュース(うそのニュース)に政府は断固として対処する」と言った。「特別に」「特に」など強調するための単語を3−4回使って各長官に指示したとのことだが、それを一つずつ見ていこう。

 文大統領は各長官に「もう一つ、特別に念押しするのは、国民との意思疎通と広報だ」と述べた。さらに、「政府政策を不当に、事実とは異なるよう歪曲(わいきょく)して非難するフェイクニュースなどの虚偽情報が提起された時は、初期から国民に積極的に説明して誤解を解かなければならない」と言った。

 文大統領は「政府政策を不当に、事実とは異なるよう歪曲して非難する」内容があるものを「フェイクニュース」だと説明したのだ。歪曲? 歪曲しているとは、どういう意味だろうか。そういうなら、政府政策を「歪曲」することと、政府政策を「批判」することを文大統領はどのように区別しているのか説明すべきだ。

 文大統領は「フェイクニュース」に断固として対処するよう注文しながら、どんなものが「フェイクニュース」なのか、実際の例を挙げなかった。文大統領が考えているフェイクニュースを少なくとも3例くらいは挙げてくれないと、大統領の頭の中にある「フェイクニュース」の類型が明確になってこないのではと思う。そうしなければ、大統領の命令を肝に銘じた各長官も適切に実践に移せないのではないだろうか。各長官が大統領の言葉を誤解して、とんでもないことをやらかしたら、一体どうするのか。

 大統領が「フェイクニュース」の例を挙げなかったので、当コラムが代わりに挙げてみよう。例えば、「所得主導成長はかえって低所得層を苦しめている」というニュースがあったとしたら、このニュースは政府政策を「歪曲」したものだろうか、それとも「批判」したものだろうか。

 もう一つ例を挙げよう。「最低賃金の急激な引き上げという政策により、若年層の雇用が減少する逆効果が出ている」というニュースがあったら、これも政府政策を歪曲した「フェイクニュース」なのだろうか。それとも政府政策を合理的に批判した「リアルニュース」(本当のニュース)なのだろうか。

 文大統領は国務会議で次のような話もした。「フェイクニュースを持続的かつ組織的に流すことについては、政府が断固たる意志をもって対処しなければならない」。さて、ここでもう一つ指摘しておかなければならないことがある。フェイクニュースを「持続的かつ組織的に」流す勢力があると大統領は言ったが、フェイクニュースを持続的・組織的に流すと名指しされたのは誰なのか、気になるところだ。

 大統領は正直に言ってほしい。リアルニュースであれフェイクニュースであれ、「持続的かつ組織的に」ニュースを作り出すことができるのは報道機関、与野党、あるいはユーチューブなど動画共有サイトのインターネット放送などが考えられるが、文大統領もまさにそのような所を指しているのか、聞きたい。
(中略)

 トランプ米大統領は、自分に批判的なニューヨーク・タイムズやCNNをことごとくフェイクニュースだと言ったことがあるが、今の文大統領も同じような話をしているのだろうか。大統領府は昨年末までに金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長がソウルに来て、ローマ法王はすぐに平壌に行くかのような発表をしたが、金正恩委員長の年内ソウル答礼訪問も、ローマ法王の平壌訪問も、これらの大統領府の発表はフェイクニュースではないのか。

 今や政権与党・首相に続き、大統領まで「フェイクニュース」に対する大々的な対応を宣言した。「フェイクニュース」かどうかを判断する際、西欧のように人種差別などヘイト関連ニュースを断つという観点ではなく、「政府政策を歪曲している」という物差しを当てるなら、それは非常に危険だ。報道機関や個人のニュース流通網を現政権寄りの宣伝ツールだと思っているという意味でないなら、「政府政策の歪曲」云々は大統領が言ってはならないことだ。

キム・グァンイル論説委員

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版<【コラム】文大統領は保守系メディアに宣戦布告したのか>
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/01/11/2019011180110.html