【ソウル=桜井紀雄】

韓国で朴槿恵(パク・クネ)、李明博(イ・ミョンバク)両被告という2人の元大統領が逮捕・起訴されたのに続いて前最高裁長官の梁承泰(ヤン・スンテ)容疑者が24日に逮捕され、「三権の長」経験者3人が同時期に拘束される異例の事態となった。

文在寅(ムン・ジェイン)政権が「積弊清算」と称して旧保守政権を糾弾する流れに司法界がのまれた形だ。日韓関係に配慮した措置が不正な介入だとみなされただけに、日韓関係に与える傷も小さくなさそうだ。

判事同士の身びいきもあり当初、裁判所が前トップの逮捕状発付を認めるのは困難だとの見方があった。

司法行政に批判的な判事を選別する「ブラックリスト」を作成したとの疑惑から始まった検察の捜査では、元職を含めて判事約100人が事情聴取されたという。裁判所に令状発付を踏み切らせたのは、ほかでもない梁容疑者の後輩判事らの証言だったとされる。

梁容疑者逮捕を受け、与党「共に民主党」報道官は24日、「司法介入の最終責任者に下された当然の帰結だ」と強調した。保守系最大野党「自由韓国党」報道官は「現政権が司法府の掌握を図ったものなら、それこそ(清算すべき)弊害だ」と非難した。

今回の逮捕は、文大統領を支持する左派層には司法は不正まみれだと印象づけ、保守層には前司法トップも旧政権たたきから逃れられないとの失望感を与えるという“二重の不信感”を生んだ。

日韓の協定に反して日本企業に賠償を求めるいわゆる徴用工訴訟をめぐって梁容疑者は「判決が確定すれば、日本が国際司法裁判所に提訴するなど反発する」として見直しを促したと報じられている。最高裁トップが外交的配慮を指示する行為が違法だとの見方がメディアを通じて広がった。

文氏は年頭の記者会見で「三権分立に基づき、司法判断を尊重しなければならない。日本も同じだ」と主張したが、司法尊重を傷つけたのは皮肉にも自身が推進した「積弊清算」だ。対日関係に配慮した措置を不正だと決めつけることで、確定判決に対して政府が取れる対応策の幅も狭める結果までもたらせている。


2019.1.24 18:14
https://www.sankei.com/world/news/190124/wor1901240034-n1.html
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