【北京=藤本欣也】中国の李克強首相は5日の全国人民代表大会(全人代)で行った政府活動報告で、台湾独立の動きを断固阻止すると表明、習近平国家主席が1月に発表した「一国二制度」による台湾統一をあくまでも模索する方針を強調した。産経新聞との会見で日台当局間の安全保障対話を呼びかけた台湾の蔡英文総統を強く牽制(けんせい)する形となった。

 李氏は台湾問題に関し、「祖国の平和的統一のプロセスを進める」とした上で、「台湾独立をもくろむ分裂の画策や行動に断固として反対し、それらを食い止める」と主張した。

また、1月2日に習氏が行った、台湾政策に関する重要講話の精神を全面的に貫徹し、実践するとした。

 同講話とは、一つの国家に異なる制度の存在を認める「一国二制度」を、香港やマカオ同様、台湾にも適用することで統一を具体化しようというものだ。

 蔡氏はこれに対し、「台湾は絶対に受け入れない」と拒否。産経新聞との会見でも「一国二制度は両岸(中台)の問題を解決する処方箋には絶対にならない」と述べて中国による台湾統一の動きに警戒感を示し、日本政府に安全保障問題での対話を呼びかけた。

ただ、「台湾は中国の不可分の領土」などとする「一つの中国」原則を堅持する中国にとって、日台当局間の安保対話は「台湾独立」に向けた動きとして断固容認できないものだ。

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は「台日政府間の安保協力など実現する可能性はない」と指摘し、台湾の総統選をめぐる蔡氏の政治的パフォーマンスにすぎないと主張。習指導部も李氏の政府活動報告を通じて、日台双方にくぎを刺す格好となった。

 一方、すでに一国二制度下にある香港について李氏は、「香港住民による香港管理や高度の自治」の方針を貫徹しなければならないと強調。中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」や、広東省と香港、マカオを一体化させる「ビッグベイエリア(大湾区)」の建設を通じ、長期的な繁栄と安定を保つことができると主張した。

https://www.sankei.com/world/news/190305/wor1903050026-n1.html
産経新聞 2019.3.5 16:34