「中国は首相や国家主席が先頭に立って空を守る運動を繰り広げ、2013年から17年までの間に大気汚染物質の排出量を43%削減しました」

 韓国環境部(省に相当、以下同じ)の趙明来(チョ・ミョンレ)長官は7日「私は中国を代弁する立場ではないですが」と前置きした上で上記のように述べた。韓国で首都圏を含む内陸を中心に、7日連続でPM2.5など粒子状物質の特別低減措置が発令された直後、韓国政府が取りまとめた「緊急対策」が発表された席でのことだった。

 この席で趙長官は、これまで中国政府が行ってきた「民間を対象とする車両ナンバーの2部制」「大気汚染物質を排出する事業場の即時閉鎖」など数々の対策に言及しながら、大気汚染問題の解決に中国がある程度成功したことを詳しく説明した。しかし国民や記者団が気になっていたのはそのような話ではなかった。

 ある記者が趙長官に「(中国が対策に成功したのなら)なぜ韓国では同じように行えないのか」と質問した。すると趙長官は「(中国のような)厳しい対策は、中国のような政治状況にあってこそ可能だ」と答えた。韓国は民主国家であるため、中国のように強権的な対策は取れないというのだ。

 しかし趙長官が説明した中国における大気汚染対策の中には、中国のような社会主義国でなくともできることが一つあった。それは全国で大気汚染物質がどこで排出されているか把握することだ。

 趙長官は「中国は25の自治区を対象に2300人以上の研究者を動員し、自治区ごとに汚染物質の排出源とその量を把握した上で、各地の事情に合わせた対策を進めてきた」とも述べたが、これなら韓国でも可能ではないだろうか。大気汚染物質が高濃度化し、深刻な社会問題となってからすでに数年が過ぎたが、韓国政府はこれまで国内で汚染物質がどこから排出されているかさえまともに把握できていない。

例えば昨年、国立環境科学院が公表した韓国国内の大気汚染物質排出量関連の統計(2015年)を見ると、韓国におけるPM10の総排出量は23万3177トンで、前年(14年)の排出量(9万7918トン)の2.3倍に達していた。これはわずか1年で排出量がそれだけ急増したのではなく、それまで統計に含まれていなかった大気中に飛散した汚染物質、あるいは動物などから排出される成分や物質がこの時から統計に含まれるようになったからだ。それでも専門家は「今なお統計にない部分は多い」と指摘する。工場や事業場で行われる廃棄物などの違法な焼却やそれに伴う大気汚染物質の排出、複数の化学物質が大気中で反応することにより発生する2次的な大気汚染物質などがそれだ。

 そのため中国が「大気汚染を全て中国のせいにするな」と文句を言ってきても、韓国政府はこれに対して論理的に反論できない。中国外交部は今月7日「韓国における大気汚染物質が中国から来たという十分な根拠があるのかは知らない」と指摘したが、韓国環境部は科学的な根拠に基づく反論はできなかった。30年にわたり大気汚染について研究を続けてきたある専門家は「反論しないのではなく、できない」と語る。このような状況で環境部は中国と協力し、人工降雨実験の拡大や、屋外における空気清浄機の開発などに向け補正予算を確保することにした。しかし中国との神経戦で勝機を得るには、このように成功するかどうか分からない実験よりも、まずは実態の把握に向けて予算を使うことから始めるべきではないだろうか。

社会政策部=キム・ヒョイン記者

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/03/11 10:01