南北経済協力の問題点などには一切言及せず

米国は北朝鮮の人権問題に600万ドル支援

 韓国統一部(省に相当)が発行する2019年度版の「統一白書」では「南北対話」ばかりが強調され、北朝鮮の人権に関する部分は大幅に減らされていたことが21日までに分かった。米国をはじめとする国際社会は北朝鮮の人権問題を深刻に受け止めているが、韓国は北朝鮮の顔色をうかがいこの問題から顔を背けている。「白書ではなく国政広報資料」といった批判も出ているほどだ。

 今回の統一白書は昨年に比べて82ページも分量が増えたものの、北朝鮮の人権問題に関する部分は逆に9ページから7ページに減った。昨年は北朝鮮の人権問題を主に取り扱った「人道的問題の解決」が第3章になっていたが、今回は「韓半島(朝鮮半島)政策」「南北対話」「南北交流協力」の次の第4章となっていた。

 今回の白書では北朝鮮の人権問題を巡って昨年問題となった事例、あるいは南北経済協力の過程で発生した問題点なども一切言及されていなかった。昨年は6月に北朝鮮人権財団の事務所が閉鎖され、また南北鉄道調査を巡って韓国政府と国連軍司令部などとの対立が表面化したが、これらも全く言及がなかった。開城に南北連絡事務所が設置された際、北朝鮮に石油を運んだとして米国とギクシャクしたことや、昨年末に1000人以上の脱北者の個人情報がサイバー攻撃によって流出した問題も記載がなかった。

 統一部は「南北合意の法制化を今後も進めていきたい」との考えを表明しているが、これは今後新たに何らかの南北合意が実現すれば、昨年10月の「9・19平壌共同宣言」の批准のように国会の同意なしに大統領が批准するという意味に解釈されている。「野党や保守層の反発は無視する」とも読み取ることが可能だ。

 脱北者のチ・ソンホさんは文在寅(ムン・ジェイン)政権による北朝鮮人権問題への取り組みについて「いわゆる人権運動家と呼ばれてきた人間たちによる政府のはずだが、北朝鮮の人権問題からは顔を背けるばかりか、むしろ活動をけん制している。あまりにも恥ずかしくて情けない」と語る。不自由な体で脱北したチさんは、昨年1月に米国のトランプ大統領が一般教書演説を行った際、米国政府から招待を受けた。

 一方で米国務省は20日(米国時間)、北朝鮮の人権問題への取り組みや情報活動などのため、今年だけで600万ドル(約6億6000万円)の基金を支援する計画を明らかにした。

キム・ミョンソン記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/03/22/2019032280080.html
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/03/22 10:39