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国連安全保障理事会による経済制裁の対象となっている北朝鮮に対して石油製品を提供したとして、韓国籍のタンカーが韓国政府により摘発された。洋上で積荷を北朝鮮船に移動する「瀬取り」の手法で、石油製品を密輸した疑惑が持たれている。韓国船による瀬取り疑惑は今回が初めてではなく、同国はこれまで制裁遵守のための十分な取り組みを怠ってきたのではないかと指摘するメディアも出ている。

◆韓国船による瀬取り
 疑惑の対象となっているのは、韓国籍のタンカー「Pパイオニア号」だ。同船は2017年9月、北朝鮮籍の2艘の船舶に対し、瀬取りの手法で石油製品を提供したものと見られている。韓国海洋警察庁は今年1月、同船船長と管理会社を、南北交流協力法および船舶入出港法違反の疑いで送検した。事実であれば韓国国内法だけでなく、国連安全保障理事会の制裁決議への違反にも当たる。

今回韓国検察庁が捜査に乗り出したのは、アメリカからの通報を受けてのことだ。当局は昨年10月から釜山港にタンカーを係留させ、調査を進めている。韓国外務省関係者は「アメリカならびに国連の北朝鮮制裁委員会と緊密に協議している」とコメントしている。

◆韓国政府の対応、十分でなく
 相次ぐ瀬取り疑惑により、米国が進める経済制裁について、韓国政府にどれほど遵守する意思があるかを疑う見方も出てきている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(4月3日、以下WSJ)は、「韓国が国家ぐるみで制裁違反を容認あるいは奨励しているという公的な証左は出ていないものの、同国による実施状況に過失があるのは明らかであり、これにより、国際的な制裁を韓国が十分に遵守していないのではないかという疑いが増している」と報じている。韓国政府は過去にも、国連制裁に違反する形で北朝鮮から石炭と銑鉄を違法に輸入したとして、3名の韓国籍の人物らを摘発している。この際も韓国が自主的に動いた訳ではなく、アメリカ側からの通報を受けての対応となっていた。

 これまで韓国当局は摘発に積極的ではなく、AP通信によると、国連制裁違反の容疑で韓国籍の船舶が拘留されるのは今回が初めてのことだ。韓国検察庁は現在、船長と管理会社について、南北交流協力法および船舶入出港法への違反容疑で調査を進めている。

◆米韓の緊張高まる
 瀬取り疑惑の発覚は、米韓の緊張をさらに高めるものとWSJ紙は指摘する。来週11日には米韓首脳会談が予定されており、南北経済協力事業の再開を進めたい文在寅(ムンジェイン)大統領と、制裁強化の立場のトランプ大統領の衝突が予想される。過去数ヶ月の会談でも、軍事費用の負担や核軍縮を巡る議論は物別れに終わっており、ここ数ヶ月で両国間の関係は張り詰めていると同紙は述べている。

とくに北朝鮮の非核化と制裁解除が提案された2月末のハノイ会談が非合意に終わってからというもの、文大統領は北朝鮮とアメリカの双方から批判の矢面に立たされている。ブルームバーグは、韓国野党からも北朝鮮への軟化姿勢を糾弾する声があがっていると報じている。ハノイ会談以降、文大統領の支持率は低下しており、先月末の調査では史上最低となる43%にまで落ち込んだ。

https://newsphere.jp/world-report/20190405-3/
NewSphere Apr 5 2019